潜在変数に基づく多変量アウトカムに対する治療効果推定方法の開発について

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K18020
• Research Institution: Doshisha University
• Principal Investigator: 谷岡 健資 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (40782818)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2026-03-31
• Keywords: 処置効果 / スパース推定 / 多変量回帰

Outline of Annual Research Achievements

本研究では，異なる尺度で観測されたアウトカムに対して処置効果を同時に推定し，かつ潜在変数によってそれらの関係を容易に解釈することができる解析手法の開発を目的としている．実際の臨床試験では主要評価項目や副次評価項目を含めた複数の評価項目を取得するが，主要評価項目の結果によって試験の成否を結論付けることが多い．しかし，探索的な解析を行う場合，そのような制約を置く必要はなく，それら複数の評価項目の処置効果を同時に推定し，その特徴を把握することは非常に応用上有意味であると考えられる．また，そのような評価項目は様々な尺度が混在しており，既存の方法を適用することが困難な場合が多い．そこで，そのような問題に対処するため，第1段階として，同一の尺度で観測された評価項目に対する処置効果推定のための統計解析手法を開発し，第2段階として尺度混在複数アウトカムに対する処置効果推定のための方法開発に取り組む計画である．
今年度はまず，アウトカムが全て量的データもしくは質的データであるような場合に対する処置効果を推定するための解析手法を開発した．特に無作為化比較試験の状況を想定したもとで，多変量の処置効果を同時に推定し，かつ共変量から共通因子を抽出する方法へスパース主成分回帰分析を拡張した．数値シミュレーションにより既存の方法を組み合わせたアプローチと比較して，提案手法の有用性を確認した．さらに，実際の臨床試験データへの適用も行い，既存の結果と解釈に矛盾がでないことも確認した．本研究成果は現在学術雑誌に投稿中である．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初の計画では1年目の終わりで複数アウトカムが量的データ，質的データ，生存時間データである場合それぞれに対して潜在変数を導入した処置効果推定のための解析手法を開発することを目的としていたが，生存時間データに対する開発が進んでいない．これは，2021年から新たに複数アウトカムに対する処置効果推定法の研究成果が他の研究者によって発表され，モデルの見直し等が必要になり，時間を要したことが原因である．

Strategy for Future Research Activity

まず，生存時間データによって表現されるアウトカムが複数観測された場合に対する処置効果推定のための解析手法の開発を進める．どのように対して相関関係を考慮するか，また後につながる尺度混在型複数アウトカムへの方法への拡張を考慮に入れながら研究を進めていく予定である．
次に尺度混在型複数アウトカムに対する潜在変数を導入した処置効果推定法を開発する．現時点で想定しているアプローチは全変数を質的な変数へ変換して，処置効果を推定する方法を想定している．そこで，質的な変数へ変換することで情報損失がどれくらい起こるのかを数値シミュレーション等で検証する予定である．特に量的データからどのように質的データへ変換すれば妥当であるか等についても検証する．

Causes of Carryover

大規模シミュレーションを実行する前の段階で時間を要したことから，計算機用のマシンを購入していないことによる残預金が生じた．また，当初予定していた研究会についてもcovid-19の影響で参加できなかったことも理由の一つである．次年度は計画通り大規模計算用のマシンを購入し，研究成果を発表するために経費を使用することを計画している．