2021 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質-海馬ネットワークへの侵襲的計測・介入による時間見積機能の神経基盤の解明
Project/Area Number |
21K18028
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
大貫 良幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (90835993)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 予想時間評価 / 海馬 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動車の渋滞や店の待ち時間など我々の日常で時間の見積りが必要な機会は多い。このような将来の事象や取り掛かる作業に掛かる時間を推定する行為は「予想時間評価」と呼ばれ、この認知機能を支える神経基盤は明らかになっていない。本研究では、頭蓋内電極を埋め込んだ患者に対して、予想時間評価を反映する海馬と大脳皮質の機能を明らかにするため、大脳皮質と海馬に頭蓋内電極(ECoG)を留置した難治性てんかん患者に対して、予想時間評価課題を実施した。この課題では消失時間の異なる白点と黒点が入り混じった画像が被験者に提示され、被験者は白黒各点の量の割合を大まかに把握し、全ての点の消失に必要な時間を予想する。課題実施中、海馬と大脳皮質に留置した頭蓋内電極から局所電位計測を行った。その結果、一部の患者において、海馬活動と予想時間との負の相関が認められた。また、上記の実験と平行して、海馬多切術(hippocampal transection)・ 軟膜下皮質多切術(multiple subpial transection, MST)・海馬および側頭葉の除去を受けた患者群に対して、ECoG検査と同一の課題を実施した。また、手術前後において、安静時fMRI計測も実施した。その結果、手術後に予想時間に変容が認められた。ただし、手術の種類が異なることもあって、特定の時間の予測が甘くなるわけではなく、個人間でのバラツキが認められた。また、安静時脳活動を用いて、海馬と他の皮質領域との機能的結合性の評価を行った。その結果、術前は海馬に対して、広い皮質領域との結合性が認められたが、手術後は非常に限局した領域での結合性が認められた。この結果は海馬に侵襲的な介入を受けると、皮質との結合性が低下し、予想時間評価が甘くなることを示唆している。今後は、課題中の皮質活動と海馬との結合性の変化から、予想時間の推定の解析を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍によって、患者数が減少してしまったが、頭蓋内電極を埋め込み手術を受ける患者、海馬多切術(hippocampal transection)・ 軟膜下皮質多切術(multiple subpial transection, MST)・海馬および側頭葉の除去のいずれかの手術を受けた患者群の検査を術前後で実施することが出来た。また、高性能の解析用PCの購入により、多チャンネルのデータの解析を遅延なく進めることが出来るようになってきた。これらの理由から、本研究計画は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も継続して、データの計測を実施する。解析は現在進行中ではあるが、副次的な解析の結果から、海馬だけでなく、線条体領域も予想時間評価に関与している可能性が示唆されており、来年度はこれらの領域も対象としたデータの取得を実施する。
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Causes of Carryover |
研究の進展は概ね順調ではあるが、コロナ禍によって本研究の対象となる被験者数が減ったこと、出張もほぼオンラインで済んだことから、次年度使用額が生じた。コロナ禍も徐々に収まることから、次年度は今年度同様に継続して、被験者のデータの獲得および解析の進展を目指す。また、得られた成果を学会でポスターおよび口頭の形式で発表を行う予定である。
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Research Products
(1 results)