2023 Fiscal Year Research-status Report
異種間における表情同調を介した感情認識メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K18030
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高岡 祥子 立正大学, 心理学部, 特任講師 (80759267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イヌ / ペット / 写真 / 主観的幸福感 / 表情 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の1年目に新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け,実験で使用する刺激の作成が困難と判断し,内容を一部変更して研究を実施した。具体的には,ペットや家族を被写体とし,表面に特殊な加工を施した2.5次元写真の触知をともなう鑑賞による心理的効果の検討を行った。2.5次元写真と従来の平面な写真を比較した結果,写真の種類にかかわらず,大切な家族やペットの写真を1か月間鑑賞することで,主観的幸福感と睡眠の質を高める効果が見られた。量的データからは心理的効果に写真間で差が無かったが,写真の種類にかかわらず,家族やペットの写真を身近に飾ること参加者の主観的幸福感と睡眠の質を上げる効果を示した点は興味深い。一方で質的なデータでは写真間で違いが見られた。写真に関する自由記述を分析した結果,2.5次元写真を初めて見て触った参加者は写真の被写体を本物のように感じ,「驚き」や「嬉しさ」という感情が喚起されていた。これは従来の平面な写真には見られなかった効果である。このような2.5次元写真の特徴は,ペットロスの治療に有効かもしれない。ペットロスの悲しみを回復させる過程では,物理的に失ったペットの存在に対し,亡くなった後にも心理的なつながりを感じることが重要である。2.5次元写真のペットは,本物のようなリアルさを感じさせる効果があるため,2.5次元写真のペットに触れることで,ペットとの心理的なつながりを感じることが可能かもしれない。今後の検討が必要である。 研究成果の学会発表は,23年5月と24年3月に国内学会,23年10月に国際学会でそれぞれ発表を行った。研究成果を2年目の5月に和文雑誌に投稿したが,3年目の9月にリジェクトとなった。同年11月に別の和文雑誌に投稿し直し,査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果の論文化に関しては,研究2年目に和文雑誌に投稿したが,査読者の都合により大幅に査読期間が延びた。その結果,最初の投稿から17か月後に査読結果を受け取ったが,リジェクトとなった。そこで論文内容を再検討し,別の雑誌に投稿し直した。2度目の投稿では査読は順調に進んでいる模様である。研究3年目の成果発表は国内学会2件,国際学会1件である。論文化の進捗が予定よりも遅れているため,進捗状況としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文の出版が最優先事項である。査読は順調に進んでおり,2回のリバイズを経て,出版に向けて順調に進んでいる。また,研究成果をふまえ,ペットを被写体とした2.5次元写真の心理的効果の応用可能性についても探っていく予定である。
初年度に新型コロナ感染症の蔓延によって変更した当初の研究計画について,可能な限りで実施する予定である。まず,実験刺激としてイヌの表情写真の収集に着手する。
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Causes of Carryover |
投稿中の論文の査読に大幅に時間がかかったため,次の実験を開始することができず,次年度使用額が生じた.しかし,現在の状況としては査読は順調に進んでいる.したがって,このまま順調に研究成果の論文の出版を行うことができれば,次の研究を開始することが出来る.具体的には,表情刺激収集にあたり,ペットのトレーナーとの交渉の交通費,撮影機材の購入,写真提供者への謝礼として研究費を使用する予定である.
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