2021 Fiscal Year Research-status Report
人は多義的な文章をいかに理解するのか:文章の循環的理解の研究
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21K18031
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
布山 美慕 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (30797311)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 文章理解 / 解釈学的循環 / 多義性 / 段落分け |
Outline of Annual Research Achievements |
人は、部分(単語や文)も全体(文章全体)も多義的な文章を、どうやって理解するのだろうか?文章は一般に多義性を持ち、かつ、この多義性を考慮した文章理解は、教育における深い読みや、芸術における美的感覚喚起とも関連し、重要とされる。文章理解の先行研究では、単語や文の理解からボトムアップに文章全体の理解が構築される過程が集中的に研究されてきた。しかし、このボトムアップのみの過程では、多義性のある文章の理解を説明できない。本研究では、多義的文章の理解解明のため、文章の部分と全体の循環的理解過程の解明を目的とし、その数理モデル構築と検証を目標とする。 本年度は段落(部分)と全体の理解の関係性分析のためにオンラインでの認知心理実験を行った。認知心理実験では、研究者が新規に開発した元童話推定課題と意味的段落分け課題を用いた。結果は現在分析中であるが、一部のオンライン実験で回答者の不誠実な回答が部分-全体の時系列分析時に大きなノイズとなることが示唆されており、今後は実験実施形態の再考や不誠実な回答除去の分析手法の構築を行う。 また、段落分け実験の分析から、読者が事前に段落終端を予測可能な場合の認知モデルの精緻化を進めた(論文準備中)。このモデリングから、事前に段落終端が予測可能であることが、より上位(全体より)の意図系列の予測に関わることが理論的に改めて示唆された。つまり、部分の理解が可能なことが、すでに全体の理解を部分的に示唆すると解釈できる。 加えて、多義的な文章理解の文章理解研究における位置づけについて、より発展的な内容を含めて展望論文を出版した(布山・西郷, 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では本年度より多くの認知心理実験を行い、段落と全体の理解の関係性の数理モデリングを深化させる予定であった。しかしcovid-19の感染者増加に伴い対面での実験実施が難しくなったため、認知心理実験がやや遅れて進行している。一方で、段落分け実験に基づく認知モデリングの深化や、多義的な文章理解研究の新たな位置づけの展望論文の出版など、本研究をより多角的に発展させた。以上から、総合的にみて、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度から所属を異動するため、まずは研究環境を整備した上で、速やかに研究を推進する。2021年度に引き続き、認知心理実験による段落と全体の理解の関係性分析を進め、かつ機械学習による階層的文書構造の推定を進める。 これまでのオンラインでの認知心理実験結果から、不誠実な参加者の回答が部分と全体の循環的関係性の分析時にノイズとなり、モデリングの阻害要因となることが示唆されている。実験実施方法や形式の再考を行い、より有効な手法で実施する。
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Causes of Carryover |
covid-19の感染者増加に伴い対面での実験実施ができなかったため、当初予定よりやや遅れて実験が進行した。これにより実験参加者謝金や実験補助者への謝金支払いが減少した。また、国内外の学会がオンラインでの開催となったため、出張費が減少した。加えて、コンピュータの購入を獲得した学内の競争的資金によって行ったため、設備備品費が減少した。これらの次年度使用研究費については、本年度未実施の実験にかかる費用、および所属の異動に伴う研究環境整備費用に充てる計画である。当初翌年度分として請求した助成金は予定通りの執行を計画する。
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Research Products
(1 results)