2021 Fiscal Year Research-status Report
身体運動の協調における他者の行動予測に関する認知モデルの構築
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21K18033
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
市川 淳 静岡大学, 情報学部, 助教 (90807942)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協調 / インタラクション / 集団運動 / 調整 / モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,複雑で動的な3人以上の運動協調で求められる調整,そしてその背後にある認知情報処理のモデル化である.認知科学や心理学,スポーツ科学,生物学,神経科学等の分野で運動協調は数多く研究されている一方で,上記のメカニズムは未だ十分に理解されていない.当該年度は,3人1組で各自がリールを回し糸の張力を変え,3本の糸につながれた1本のペンを動かし正三角形をなぞる課題(丸野, 1991, 発達心理学研究; Ichikawa & Fujii, 2021, CogSci 2021)を用いて不均一な役割を運動方程式で定式化した.具体的には,手元へ引き寄せるように主導でペンを動かす糸を「張る」役割,ペンがスムーズに移動するように対応する「緩める」役割,そして2つの役割が遂行されたことでペンが辺の幅から逸脱しないように,あるいは移動にタイムロスが生じないように集団全体のバランスをとる「適度に張る」役割をルールベースで数理モデル化した.なお,先行研究の行動実験 (Ichikawa & Fujii, 2021) ではペンや張力を時系列で計測し,3つ目の役割が課題の成果を示すパフォーマンスに関連することが統計モデルから推定された. シミュレーションを行い,行動実験と比較した結果,提案したモデルで3辺をなぞることができ,かつ一部の辺で行動実験と同程度のパフォーマンスを達成したことが確認された.少なくとも3辺をなぞるためには「適度に張る」役割が3人のリール操作の結果を反映するペンの逸脱量に関する情報を参照する必要がある可能性が示唆された.行動実験だけでは議論することが難しかった運動協調で重要な役割の調整過程や予測認知等の構成論的な理解が進むかもしれない.一連の取り組みは,国内の学術大会で成果を報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
なぞり課題を用いて複雑で動的な3人の運動協調における不均一な役割を運動方程式で定式化し,シミュレーションから正三角形の3辺をなぞるモデルを構築することができた.さらに,先行研究の行動実験とパフォーマンスを比較することで,運動協調で重要な役割の調整に最低限必要な要素や今後の検討事項が示唆され,国際会議等に投稿できる段階まで進捗したため.
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Strategy for Future Research Activity |
当初は,提案した数理モデルの妥当性を検証するなぞり課題を用いた新たな行動実験を行う予定であった.しかし,新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを考慮し,過去の行動実験と比較するために追加のシミュレーションの実装や,議論をさらに深めて学術雑誌への論文投稿を優先的に進める予定である.合わせて,シミュレーションが現時点で人の運動協調をまだ十分に再現できていない検討事項も踏まえ,トップダウン型の情報処理となるルールベースだけでなくボトムアップ型の情報処理にあたる強化学習を組み込んだモデルの構築に挑戦することも視野に入れている.
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Causes of Carryover |
本研究を遂行するにあたり,当該年度は他大学の研究者との打ち合わせや学術大会は主に,電子メールやビデオコミュニケーションツールを用いてオンライン上で議論を行った.今後は対面で参加し,これまでよりも密な議論を行う予定である.また,学術雑誌等への投稿・掲載に向けて英文校正サービスや有料の統計ソフトウェアをより使用する予定である.
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Research Products
(4 results)