2021 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイド形態形成解析のための三次元制御・計測プラットホームの構築
Project/Area Number |
21K18061
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高野 温 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30883657)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形態形成メカニズム / オルガノイド / キューブ培養器 / 3Dバイオプリンティング / 初期配置制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は3Dプリンターで作製した水溶性モールドを用いて,キューブ培養器に充填した細胞外マトリックスゲル中に細胞集団を初期配置制御して培養する手法を構築した.本手法では,まずコンピュータ設計支援ソフトウェア上でデザインした形状をバイオプリンターと水溶性インク(Carbohydrate glass)を用いて造形して水溶性モールドを作製した.次に,この水溶性モールドをキューブ培養器内に充填した硬化前の細胞外マトリックスゲル液に浸漬させた状態でゲル液を硬化させた後,水溶性モールドを生理食塩水で溶解除去した.そして,水溶性モールドが除去されることで形成された空間に高濃度に濃縮した細胞を導入し,この空間の内壁に細胞を接着させ培養した.本手法を用いてI型コラーゲンゲル中に形成した円柱形状の空間は,直径1 mmの設計値に対して実測値が0.94 mm程度となり,真円度と真直度が0.03 mm以内の精度で形成された.また,I型コラーゲンゲル中に形成したらせん形状の管腔内壁に血管内皮細胞を接着させた培養実験を行い,管腔に沿ってシート状になった血管内皮細胞群の三次元イメージングを達成した. 本手法の構築により,形状の設計自由度が高い水溶性モールドをキューブ培養器と共に運用できるように最適化された三次元培養プラットフォームが確立され,キューブ培養器内で細胞を初期配置する際の制御性が大きく向上した.細胞を初期配置する制御性の向上により,細胞外マトリックスゲル内における培養実験が高い再現性で実施できる.加えて,キューブ培養器の特長であるミリメートルサイズの大きなサンプル対する高精度なイメージング技術と組み合わせることによって,オルガノイドの形態形成メカニズムの解明にむけて任意の初期配置形状から培養された細胞組織の形態形成を三次元的にイメージングすることで定量的に計測するための基盤技術が整った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り,1年目内にキューブ培養器に細胞の初期配置を制御する手法を構築し,三次元培養プラットフォームの確立を行った.さらに,当初は2年目に計画していた培養プラットフォームの有用性の実証まで達成できた.具体的には,キューブ培養器に充填した細胞外マトリックスゲル中に形成した空間寸法の定量的な計測を実施したことに加えて,形成した空間内壁に細胞を均一に接着させる手法の構築も達成した.これらの成果は,当該年度で確立した培養プラットフォームが,細胞の初期配置制御技術とキューブ培養器の高精度なイメージング技術を両立させることで細胞組織の形態形成を制御・計測する培養系であること示し,有用性の実証になったと考える.今後,本培養プラットフォームが細胞と細胞外マトリックスゲルの空間配置制御と三次元計測を同時に満たす画期的な三次元培養方法としてオルガノイドの形態形成メカニズム解明への展開を見込むことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で得られた成果をふまえ,申請した計画に従い細胞組織の形態形成メカニズムの解析を行う.この解析を行う際にいくつかの事前実験を行う.事前実験の内容としては,水溶性モールドの疎水性コーティング処理の最適化があげられる.現在使用している水溶性モールドの材料であるCarbohydrate glassは,細胞外マトリックスゲル液に浸漬して数分で溶解するため,細胞外マトリックスゲルの硬化が完了するまでモールドの溶解を遅延させる目的で乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)でモールド表面を疎水性コーティングしてから使用する必要があった.この際に,モールドを溶解除去して形成した空間内壁にコーティング膜が付着して残留する可能性があり,培養時に細胞と細胞外マトリックスの直接的な接触を妨げる懸念が生じた.そこで,コーティング膜の残留の有無と細胞の生育への影響を調べ,必要に応じでコーティングを洗浄除去する方法を検討する.また,所属先の変更に伴い研究環境が変わったため,解析対象を申請時の気管支オルガノイドから変更することを検討する.
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