2021 Fiscal Year Research-status Report
高分子-細胞膜間の運動性が低下した水和水量を指標とする癌細胞標的化技術の確立
Project/Area Number |
21K18066
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西田 慶 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (30895272)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 細胞標的化 / 細胞材料間相互作用 / 非特異的相互作用 / 水素結合 / 非水溶性高分子 / コアセルベート液滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質間相互作用が生じ得るタンパク質の表面には運動性の低下した水分子が多量に水和していることに着目し、高分子材料および細胞膜間の水和水量を指標とした細胞標的化技術の確立を目的とした。運動性が低下した水和水はタンパク質間接触が生じる初期段階において、水素結合網を形成することで自由エネルギーを安定化し、タンパク質間相互作用の形成を促進することが示唆されている。そこで申請者は、タンパク質間相互作用で見られる水和水の運動性による相互作用力を、材料-細胞膜表面間の相互作用に適応できないかと考えた。細胞膜の構成成分は細胞種によって異なることから、細胞膜表面上の水和水もまた異なると予想し、高分子材料側の運動性が低下した水和水量を適切に調整することで特定の細胞に対して高い相互作用力が誘起されると期待した。このような研究概念を立証するために本年度は、1. 高分子材料および細胞膜の水和水の評価、2. 水分子に着目した癌細胞と高分子材料間の相互作用力の評価を実施した。また、高分子材料のコアセルベート様の微粒子を作製することに成功し、高分子材料の水和水量を精密に反映した微粒子として評価に用いた。水和水量の異なる高分子からなるコアセルベート微粒子を作製し、複数の細胞種に対して添加した。その結果、コアセルベート液滴は水和水量に依存して、細胞に対する集積性が変化することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1. 高分子材料および細胞膜の水和水の評価、2. 水分子に着目した癌細胞と高分子材料間の相互作用力の評価を実施した。本研究の基盤材料として、結合水量が異なる複数のpoly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA)類似体を合成した。PMEA類似体を適切に、水中で水和させることで、コアセルベート様の微粒子を形成することを見出した。脂質表面の水和状態を評価するためのプローブとして知られるLurdanを各微粒子に挿入し、液滴の水和状態を評価した。その結果、液滴の結合水量は、熱量分析から求めた高分子の結合水量を反映していることが明らかとなった。同様に、特定のヒト癌細胞とヒト正常線維芽細胞にlaurdanを挿入することで、細胞膜上の水和状態を検討したところ、癌細胞において水和水量が少ないことが示唆された。そこで、各コアセルベート微粒子を各細胞に添加した結果、細胞膜の水和水量が少ない癌細胞に対して、水和水量が多いコアセルベート微粒子が顕著に集積し得ることを見出した。さらなる評価を通して、高分子材料側の運動性が低下した水和水量を適切に調整することで水和水量を指標とした細胞標的化技術の確立に繋がると期待される期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞膜側における水和水量を決定する要因を、癌細胞と高分子材料間の相互作用力の評価を通して実施する。特に、細胞膜上のコレステロール含有量や糖鎖発現量と水和水量の関係に着目して検討を行う。得られた知見をもとに、細胞膜モデルを用いたメカニズムをQCM-Dを用いて評価する。コアセルベート微粒子の構築により、実験動物に対して適応可能となったため、実験マウスレベルにおける癌組織集積性の評価を検討する。
|
Causes of Carryover |
研究計画において、水晶振動子マイクロバランス (QCM-D)による評価を実施する必要が生じたため次年度において購入を予定している。
|
Research Products
(19 results)