2021 Fiscal Year Research-status Report
鉗子把持状態の“良悪”を識別する生体適合型構造色式センサの開発
Project/Area Number |
21K18090
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
前田 祐作 香川高等専門学校, 機械工学科, 講師 (00803404)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CNN / 把持 / 鉗子 / 軟性内視鏡 / 低侵襲治療 / 構造色 / 物理センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
軟性内視鏡を用いた超低侵襲治療における,医師が視覚しか得られないため,鉗子の扱いなど,「治療技術の習熟」が困難であるなどの課題があり,鉗子把持状態の“良悪”など,医師が必要な情報を提示可能な技術の実現に向けて,取得する情報に応答する構造色を有し,生体適合性材料で構成されたセンサによる,生体適合と多様な計測を両立した計測技術の実現に向けた研究を実施している。令和3年度は,生体適合材料を使用したセンサ素子の実現に向けて,3Dプリント技術と半導体微細加工技術を組み合わせた,製作プロセスを提案し,樹脂材料の研磨による光学表面を得るプロセス,サブμmのギャップ制御を可能とする接合プロセスをそれぞれ実現した。各工程の開発により,実際に構造色生成が可能であることを確認している。また,センサの生体内動作の検証実験として,模擬粘液内でのセンサ動作が可能なことを実証している。加えて,定量的な評価指針のない,鉗子把持状態の“良悪”の評価に向け,鉗子の把持開始時の把持力を入力とし,把持状態の【良】,【悪】どちらかの分類結果を出力とするCNNモデルを構築した。センサの製作工程の一部は,国際会議にて,模擬粘液内での計測実験結果は,学術論文として報告している。生体適合材料で作製された構造色式センサについてや,ディープラーニングを活用した把持状態の良悪判定については,今後得られた成果を国際会議および学術論文として報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は,2年間で,当初の研究目標を達成する計画である。研究目標は大きくは以下の3つに区分され,それぞれの進捗は以下の通りである。 1)生体適合性材料で構成されたセンサ素子の開発:本年度では,センサ素子を実現するための,各工程の確立を課題として,開発を実施した。具体的には,3Dプリンタを使用したセンサの機械構造造形,光学反射面を得るための研磨,樹脂同士の接合がそれぞれ課題であったが,各工程はそれぞれ良好な条件が得られており,おおむね順調に進展している。 2)把持状態の良悪を判定可能なモデルの構築:本年度では,取得した把持力データから,把持状態の良悪を分類するCNNモデルを開発した。今後実験データ量を十分に確保することで,有効な分類精度が得られると考えられ,全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。 3)手術模擬環境での動作検証:本年度は,生体環境を模擬した,粘液下での動作検証実験を行い,1時間以上の動作が可能であることを実証している。構造色式センサは機械構造の変形による色変化をとらえる単純な原理のため,この実験により,センサ素子自体の生体内動作には懸念がないことが示され,おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本課題の最終年度にあたるため,以下の3つの課題について,それぞれ解決を目指して研究を推進する。 1)生体適合性材料で構成されたセンサ素子の開発:開発した構造色を呈するセンサ素子の,力覚や温度,圧力に対する応答を取得する。 2)模擬臓器を鉗子で把持した際のデータを収集し,都度,構築したCNNモデルの分類精度を確認していく。分類や,把持の改善に向けたアドバイスを実現するために必要なデータ量の推定や,最終的なモデルによる良し悪し判定の有効性について,検討を行う。 3)手術模擬環境での動作検証:内視鏡カメラから構造色を取得するため,センサ素子自体の角度や,周辺の光源による影響を補償するアルゴリズムについて,動作検証を行う。 上記の各成果から,生体適合と多様な計測を両立した計測技術として,低侵襲治療発展の支援を目指す。
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