2022 Fiscal Year Research-status Report
アニメの声が喚起する「情動」を手がかりに声の文化的制度化を分野横断で捉える試み
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21K18116
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
太田 一郎 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (60203783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都木 昭 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60548999)
太田 純貴 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90757957)
菅野 康太 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80722470)
石井 カルロス寿憲 国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, 上級研究員 (30418529)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 社会音声学 / アニメの声 / メディア文化研究 / 言語文化研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 今年度より新たに石井カルロス寿憲(理研上席研究員)が研究分担者として参加し,印象評定に基づくデータの選別,音響特性の抽出の工夫などを施して,これまで収集したデータにより精密な分析を実施した。その結果,キャラクターの異なりにいくつかの音響特性が影響すること,またこれまでの分析結果同様,それぞれのキャラクターには発話者間で一定の共通する傾向がみられることなどがわかった。この成果はICPhS2023(国際学会,2023年8月開催)において発表予定である。 (2) 2022年9月3日社会言語科学会の第4回シンポジウム(オンライン開催)「プロソディを通して見る社会とコミュニケーション」において,「社会言語学の「社会」と「プロソディ」」という題目で社会言語学の立場から本科研の成果の一部を含めて発表した(招待あり)。発表においては,バリエーション研究における「社会」の意味とその変遷,社会言語学におけるプロソディ研究の先行事例,社会音声学による声質の研究の成果とその問題点,「社会」を反映する研究を今後どのように行うかの可能性を述べた。 (3) 社会音声学ハンドブックの日本の社会音声学についての章を分担執筆した(出版準備中)。フォルマント周波数と強度,スペクトル傾斜,および基本周波数などがキャラクターの区別に寄与することを示唆し,アニメキャラの声質には一定の型があるのではないかということを指摘した。またそれらの音響特徴が社会的・文化的状況の変化と相互に影響を与えあい,声の社会的意味が移り変わる可能性があることを述べた。 (4) メディア文化を構成するメディアテクノロジーの物質性を読み解くための翻訳書(『メディア地質学』)を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は,①アニメの声質の特徴を捉えるために,音響パラメータの分析をさらに進めること,②アニメの声質の一般的な音響的特性を明らかにするために,一般人女性の声を収録するなど新たなデータを収集すること,③アニメの受容状況やファンの活動等について,海外のアニメ関連イベント等での観察やインタビュー等の調査を行うことを予定していた。①に関しては新たな結果を得ることができ,おおよそ予定していたような進捗状況まで達した。しかしながら,コロナ禍の影響は予想した以上に長引いたため,②については対面での調査が困難であったこと,③については海外への渡航が著しく制限され調査を行うことができなかったことなどから,(4)という評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行えなかった調査を実施するなどして遅れを取り戻し,研究を進展させる。①今年度行った声質の分析をさらに進めて情動との関連を追求する準備を行う,②一般人女性の声のデータを収集し,声優コース学生の声と比較する準備をする,③声優による新たな音声資料の収集を計画する,④声と触感性などの文化的概念の関連の検討を進める,⑤アニメの受容状況やファンの活動等について,アニメ関連のイベント等で調査やインタビュー等を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは,国内,海外ともにコロナ禍により移動が制限されたために,資料収集や現地調査などが実施できなかったこと,また当初予定していた国内外での学会の参加もコロナ禍でオンライン開催となったため,その分の旅費を支出しなかったことなどによる。令和5年度は社会活動の制限はなくなることが見込まれるので,国内および海外での調査や発表等の研究活動に使用する予定である。また,新たな声優の音声資料の収録や調査会社等を利用した調査の計画も進めるので,人件費,調査費,結果を英語で公表するための英文校閲費などにも使用する。
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Research Products
(4 results)