2021 Fiscal Year Research-status Report
How wild rice had been domesticated as human edible resource.
Project/Area Number |
21K18118
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 隆二 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90202978)
一谷 勝之 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (10305162)
志水 勝好 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (40261771)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2027-03-31
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Keywords | 野生イネ / 栽培化 / 生産量推定 / プラント・オパール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界的なインタレストである「野生イネの栽培化」に関する研究の現状と限界を打破するため、野生イネのプラント・オパール(細胞化石)の密度と形態からその生産性と栽培イネへの変化に関するデータを収集する手法の開発を目指している。 今年度は、当該研究を構成する【取組1:プラント・オパールを活用し、野生イネに関する3つの調査分析手法の構築と基準づくり】および【取組2:構築した手法と基準の運用と効果の検証】の取組1について、生産量の推定方法の検討に必要な試料採取と予備実験といくつかの検討を行った。具体的には、以下のとおりである。 ・2022年度以降の野生イネの生産性の実験に供試する野生イネ種子を増殖し、多年生野生イネの生産力に関する予備実験を行った。また、栽培イネのプラント・オパール形状の多様性を明らかにするため、世界イネコアコレクションを供試し、プラント・オパール分析用の試料を採取した。さらに、野生イネの雑種種子稔性に関する遺伝子座の一つを明らかにした。 ・イネは一般的に、栽培化により種子の大粒化を生じる。そこで、野生種において種子の大粒化を生じるケースについて、GRAS-Diマーカーシステムによる遺伝解析を行った。その結果、野生種のようにゲノムが解析できていない場合でも多型マーカーを得ることが可能であり、野生イネと栽培イネでも1000以上のマーカーの分離が期待される結果を得た。 ・鹿児島大学で栽培された東アジアの栽培イネO.sativaの祖先野生種であるO.rufipogonならびにO.meridionalisについて、各部の重量ならびに葉身中に形成された機動細胞由来のプラント・オパールの数を調査分析した。得られた生産量の推定に必要な各データについて、その特性と相互の関性を検討した。その結果、栽培イネの生産量推定手法を野生イネに適用できることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は採択初年度であり、また、採択内定が7月上旬のため、当該年度の栽培実験の適期が過ぎていた。そのため、2022年度は、実験計画策定と実験分析の設備と環境整備を中心に取り組んだ。しかし、先行して進めてきた研究により野生イネ試料が確保できていたため、採択初年度ながら、実績欄に記載したとおり、雑種種子稔性についての分析や種子の大型化についての遺伝解析、さらに、野生イネの生産量推定についての実験と実質的な検討を行うことができた。 以上の点から、2021年度は、計画以上に研究が進展したと言える
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた実績を踏まえつつ、当初の研究計画に沿って、2022年度以降の研究を推進してゆきたい。残り5年をかけ、以下の2つの取り組みを進める。なお、今後のコロナ禍の状況に応じて、海外調査については、収集済みの海外試料の活用など、効果を確保しつつ、柔軟に展開してゆくこととしたい。 【取組1:プラント・オパールを活用した、野生イネに関する3つの調査分析手法の構築と基準づくり】①野生イネの存否:野生イネと栽培イネのプラント・オパールの形態には一定の差異が認められる。そこで、両者のプラント・オパールの形態を数値化し、判別基準を作成することで、土壌中の野生イネプラント・オパールの存否を判定する手法を構築する。②野生イネの生産性:イネが生産するプラント・オパール数と種実の重量には、相関関係があることが知られている。そこで、野生イネを栽培し、両者のデータを収集し、野生イネのプラント・オパールが確認された土壌の範囲(面積)と土壌中のプラント・オパール数(密度)から、種実重(生産量)を復元する手法を構築する。③野生イネの栽培種への変化:野生イネと栽培イネを交配(雑種第一代に栽培イネ、野生イネをそれぞれ連続戻し交雑)して、そのプラント・オパール形状と遺伝情報を調べ、栽培化の程度を推定する基準を構築する。また、あわせて、イネの栽培化に関連する遺伝子とプラント・オパール形態との関係について、遺伝的な解明も試みる。 【取組2:構築した手法と基準の運用と効果の検証】この取組は2つのステップで行う。 ステップ1:研究代表者の下に保管されている、栽培化の初期段階に相当する新石器時代のボーリング土壌について、構築した手法と基準を適用し、具体的な運用と有効性の検証を試行する。ステップ2:栽培化の過程が生じたと想定される遺跡やその周辺のボーリング土壌のプラント・オパール分析を行い、手法の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナ禍の影響が大きく、対面での研究打ち合わせや鹿児島大学での現地検討会の実施を行うことができなかった。そのため、打ち合わせをリモートで実施することとなり、旅費支出が発生しなかった。また、採択内定が7月上旬であったため、栽培実験の一部を来年度に延期するものが生じたこと、予定していた機材について、購入時に、同等の性能を有する安価な機材で充当することができたため、物品費や栽培実験のアルバイト経費などの支出が大幅に減少し、結果、次年度使用額が生じた。この予算については、2022年度を含め、今後の研究打ち合わせならびに分析の充実に必要な機材および人件費に充当し、研究内容の充実を図る。
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