2023 Fiscal Year Research-status Report
Action research on remote education in the nomadic, mountainous, and indigenous areas
Project/Area Number |
21K18122
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
稲村 哲也 放送大学, 教養学部, 客員教授 (00203208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 恒夫 放送大学, 教養学部, 教授 (70182540)
奈良 由美子 放送大学, 教養学部, 教授 (80294180)
鈴木 康弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (70222065)
石井 祥子 名古屋大学, 減災連携研究センター, 研究員 (30398359)
小貫 大輔 東海大学, 教養学部, 教授 (60439669)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2027-03-31
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Keywords | リモート教育 / モンゴル / 遊牧社会 / レジリエンス / コンテンツ / 防災 / モンゴル国立大学 / 的グロッソ連邦大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、モンゴル国を中心に、リモート教育の意義とニーズが高い遊牧・山岳・先住民地域において、モンゴル国立大学等との共同により、運用・実践と調査研究との両面を通じて、地域適合型のリモート教育モデルを構想し、学術的・社会的な貢献を目的とする実践的研究である。 2022-2023年度には、放送大学とモンゴル国立大学(NUM)の間の大学間包括協定に基づき、稲村と現地協力者のバトトルガが相互に訪問し、この数年間のモンゴル国立大学におけるリモート教育の発展状況を把握・共有した。モンゴル国立大学では、2019年に独自のスタジオを整備し、放送大学が機材とコンテンツ制作の支援をしてきたが、COVID-19パンデミックを機に、リモート教育の必要性が高まり、体制の強化が進められた。ただし、コンテンツの制作や運営には課題も多く、2024年度にはJICAの資金により、7-8月に3名の職員の研修を放送大学に派遣することが決まった。 一方、研究分担者の石井を中心に、モンゴル北端のフブスグル県におけるリモート教育の現状を調査した。地方での遠隔教育も大きく進展していることが明らかになったが、学習者の側からは、まだWifi環境が十分とはいえず、スマホ料金の負担が勉学状況に大きな限定要素となっているなどの課題も明らかとなった。 そうした課題は多いものの、情報環境の改善は国家事業として推進されつつあり、リモート教育のシステムの改良とコンテンツの充実は重要である。 モンゴルの伝統的な遊牧システムは柔軟性・移動性をもち、「危機をいきぬく知」としてのレジリエンスの観点から見れば、世界的課題に対するオールタナティブな方向性をもつものであり、その存続はきわめて重要である。リモート教育は、遊牧の生活を続けながら高等教育を受けることが可能な手段であり、遊牧社会において画期的な教育システムであることが改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には、モンゴルを中心に現地調査を実施することができた。当初計画にあったパイロット・スタディについては、COVID-19パンデミックを機に、モンゴル国立大学でのリモート教育の体制と実践が画期的に促進されたため、稲村が現地協力者のバトトルガ教授ほかと協議し、放送大学とモンゴル国立大学の間の包括協定(2019年締結)に基づき、モンゴル国立大学の実践をサポートしながら、リモート教育のモデル構築を進めていく方針に転換することとした。 本プロジェクトは、JICAの草の根プロジェクトによる「防災啓発」(略称、代表鈴木康弘)と連携しながら、実践してきた。研究分担者として、鈴木は、災害地理学およびレジリエンス研究の体系化を試みながら、様々なメディアを通じた防災教育手法を研究した。モンゴルにおいては活断層調査を実施し、モンゴルに適した防災教育手法・防災教材のあり方を検討した。国内においては熊本地震による地表変動の再検討、および令和6年能登半島地震の緊急調査を実施し、活断層評価および地震発生予測の問題点を整理し防災情報の取り扱いに関する問題提起を行った。 分担者の石井は、フブスグル県においてリモート教育の実施状況について聞き取り調査を行った(その内容については「研究の概要」で記した)。またモンゴルにおけるリモート教育の教材とするため。熊本および東北の復興事例の取材を行った。 分担者の奈良は、モンゴルと日本の感染症災害対応の比較考察の共同研究を含めて、自然災害と感染症災害について得るべき知識やリテラシー、リスクコミュニケーションの要点、危機を乗り越えるうえでレジリエンスの要件について検討した。また、山田は、周縁化地域でも持続可能な利用環境に資する国際技術標準の調査を行った。また小貫は、マトグロッソ連邦大学との国際的なリモート教育の連携についての多角的な検討を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトは、地域の特性、課題とその解決策を検討し、地域適合型のリモート教育のモデルを構想することを目的とするが、モンゴルをその中心的なフィールドをとし、主としてモンゴル国立大学と共同で進めてきた。モンゴル国立大学において、リモート教育推進が実施に移されており、今後はそのプロジェクトを放送大学が支援し、その過程でモデルを検討してゆく。具体的には、2023年7-8月にかけて2週間、モンゴル国立大学の専門スタッフ3名が放送大学で研修を受けることになった。その間、前半は、番組制作現場の見学、コンテンツの制作にかかわるレクチャーを受講し、後半は、コンテンツの制作を実施する。この研修には、副学長とリモート教育のスキル向上を管轄するセンターの長も同行する。本研究プロジェクトとしては、両教員と議論を交わすとともに、研修の過程に参加・共同し、参与観察的な方式による研究を進めたい。 リモート教育では孤独感や学習の継続性などの課題があり、課題解決として地域拠点での学習ネットワークなども検討すべき課題である。モンゴルで社会主義時代に全国に設置された博物館も、リモート教育に欠ける実物教育と対面交流の地域拠点として有用な資源となる可能性が高い。研究代表者の稲村は、2024年4月から野外民族博物館リトルワールドの館長に着任したが、それも踏まえて、今後、博物館の活用についても検討したい。 小貫を中心として、南アメリカで先進的なリモート教育を推進してきたブラジル・マトグロッソ連邦大学との連携も進め、さらに、ニーズの高い山岳地域として、ネパールやペルーにおいても比較調査を進めたい。こうした実践を通じて、追跡調査、課題抽出、対応方策の検討を行い、地域適合型のリモート教育のモデル構築を目指してゆく。
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Causes of Carryover |
ネパールから研究協力者が来日する予定であったが、都合により来日ができなくなったため。また、ネパールおよびペルーで現地調査を実施する予定であったが、現地協力者との日程調整ができず、実施できなくなったため。 2024年度には、研究協力者が来日し、また、研究代表者がネパールおよびペルーで現地調査を実施する。
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[Presentation] New Evidence of Ulaanbaatar Fault Activity Revealed in 2020-2022 Survey2023
Author(s)
Yasuhiro Suzuki, Mitsuhisa Watanabe, Takashi Nataka, Hedeaki Goto, Tomoru Yamanaka, Wataru Mori, Munkhsaikhan Adiya, Demberel Sodnomsambuu, Bayasgalan Amgalan, Narangerel Serdyanjiv, Gantulga Bayasgalan
Organizer
American Geophysical Union (AGU), San Francisco
Int'l Joint Research
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