2021 Fiscal Year Research-status Report
生物と人の接触から生じるリスクと生物多様性の最適バランス:生態学と経済学の融合
Project/Area Number |
21K18128
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河野 達仁 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00344713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
占部 城太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50250163)
井元 智子 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60550324)
吉田 惇 九州大学, 工学研究院, 助教 (80821826)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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Keywords | 都市経済学 / 生態学 / Lotka-Volterra / メタ個体群 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,クマなどの野生動物がエサを求めて都市へ侵入し,人を襲う被害が増加している.これには都市拡大と温暖化による森林内の木の実不作などが影響している.また,感染症を引き起こすウイルスを動物が運ぶことも多い.そして,ウイルスの発現にも温暖化が影響することが懸念されている.本研究では,都市化や温暖化によってもたらされる都市住民と生物の接触が引き起こすコンフリクトを経済学と生態学の両学問の統合を行い,その解決案を探ることを目的としている. 研究実績としては,Yoshida & Kono (2020)が用いたLotka-Volterra モデルを子供と大人の2世代に生物種を分割したLotka-Volterra モデルに置き換えた.この分割により,子供と大人の生態の違いを反映することができる.本年度構築したモデルでは子育てエリアを特定化しなかったものの,子育てエリアが都市内や森林に散らばるとメタ個体群モデルとなる.すなわち,局所的集団(パッチと呼ばれる)が多数点在し,それぞれのパッチでは生成と消滅を繰り返しながら生物が存続するモデルでなる. 分析結果として,温暖化が進み森林に動物の食物が豊富になるものの,それ以上に動物が増加する時期が来ることで,結果として動物の頭数が減少するというパラドックスを示すことができている.また,その現象における子供と大人の頭数の変化も表現できている.子供と大人を分けていることで,その生態の違い(行動範囲や警戒心の違い)を考慮して,最適な駆除計画を考えることができる.今後は,構築した生態系モデルと都市経済モデルの統合モデルの動学の解の性質について,パラメータを変化させて把握する研究を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当所の計画通り進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在のモデルの理論的性質を捉える分析を行う.また,メタ個体群モデルへの拡張も行う.理論分析のみならず,構築した二つのバージョンに関して特定生物種に関する定量分析を行う.この時,生物の選択は,分析開始時点でのデータ利用可能性に依存する.生物の移動データはMovebank(https://www.movebank.org)に世界中のデータが集められている.これらのデータは,小型追跡機器を動物につけて採取されたものである.現時点では,広範囲を移動する動物(例.うみどり,アホウドリ)のデータが多い.今後,感染症リスクの高い動物のデータ(例.コウモリ)が増加すると期待される.また,国内の生物学者が,都市部への侵入が多いサル,クマ,カラスの移動について研究をしている(Sato & Endo (2006)など).この定量分析については,令和5年度時点で,データ蓄積状況および動物の行動特質の観点から二つのバージョンそれぞれ1種類の動物を選んで定量分析を行う.定量分析は,キャリブレーションによるパラメータ設定によるシミュレーションで行う.パラメータは想定でも設定できるため,十分なデータがなければ,感度分析的に複数パラメータを用いることで一定の結論を導ける.なお,森林の植生分布やその変化の設定も必要である.
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Causes of Carryover |
計画していた学会発表がオンラインに急遽変更になったことと,購入を予定したパソコンが業者の都合(半導体の供給状況による遅延)で遅れたことが原因である.
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Research Products
(16 results)