2021 Fiscal Year Research-status Report
A new look into various arithmetic and topological invariants through the eyes of modular knots
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21K18141
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金子 昌信 九州大学, 数理学研究院, 教授 (70202017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松坂 俊輝 名古屋大学, 高等研究院(多元), 特任助教 (60868157)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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Keywords | モックテータ関数 / モックモジュラー形式 / 結び目不変量 / 実2次体 |
Outline of Annual Research Achievements |
結び目不変量と多重ゼータ値の結びつきは,近年の活発な多重ゼータ値研究の最初の原動力となったもののひとつであり,本研究の計画調書でもその観点からの計画を盛り込んでいるところである.徐策,山本修司と共同で,フルビッツ型多重ゼータ値に正規化理論を拡張し,大きな関係式族である川島関係式との関係を研究した.これにより川島関係式を従来とは異なる,より自然と思われる見方で理解することが出来た.結び目不変量と関係の深い,ドリンフェルトアソシエータから来る関係式族と川島関係式の関係を理解する糸口になると期待され,その知見はいずれ本研究にもプラスになっていくと思われる.また,二重ゼータ値とモジュラー形式の関係について,金子が以前 Herbert Gangl,Don Zagierと行った研究を,導手が4の指標付き多重ゼータ値に拡張する試みを行った.証明がまだつけられていないものの,非常に興味深い現象が発見された.これについては今後も引き続き現象解明に努めていく. モックテータ関数,モックモジュラー形式については関係者の間で議論を進め,松坂は概説論文を執筆した.これによって研究の大きな流れを概観することが出来,今後の研究の進展にとり有益である. Daniel Duverney,Carsten Elsner,立谷洋平と共同で,古典的なテータ関数やエータ関数を縦横に用いて, フィボナッチ数を用いた無限積の超越性などの結果を得た.モジュラー関数の実2次点での値の超越性にも道が開けないものかを探る研究を立谷と対面で行った. 実2次体のキャリバーについての以前の研究を,3次体へと引き続き展開し,研究指導を行っている大学院生中園大雅が最終的にキャリバーが1の3次体を完全に決定した.3次体の類数とモジュラー関数の研究は古くデデキントが行っているが,その研究との関連や,本課題との結びつきを探るのが今後の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の見通しに反し,今年度も年度当初から終わりまで,新型コロナ感染症の大きな影響のもと,研究活動も多大な制約を受けた.対面での研究会や研究打ち合わせが殆ど出来ず,予算の執行も予定よりは大幅に遅れ,次年度への持ち越しを余儀なくされた.多重ゼータ値関連の研究結果や実験による発見は,非常にすぐれたものと考えるが,本研究の目的を達成するためには,今のところ,無関係ではないとはいえ迂遠であると認めざるを得ない.「モジュラー結び目」をキーワードとした本研究本来の研究は,松坂と植木潤により着々と進行してはいるものの,その知見を代表者とも共有し成果として内外に発表していく点で,やや遅れていると判断する.しかしながら次年度からの状況は徐々に好転していくであろうと楽観している.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の状況を見据えながらのこととなるが,引き続き,モックモジュラー形式,調和マース形式などの関連研究を調べながら,モジュラー結び目,そして楕円モジュラー j-関数の実二次点での値をキーワードとした研究を進めていく.すなわち,従来の視点を大きく広げて,実二次体や不定値二次形式の数論に資する数論的不変量を取り出していくことを目標として研究を進める.クライン群の保型形式にまで枠組みを広げていくのも,未知の分野への探求であり,大変興味深い方向であると考えている.出来れば対面で,水野義紀,Zagierらとの議論を行いながら方向性を探っていく.水野がその後行ったヒルツェブルフ和と類数の関係を,本研究の視点から解釈,拡張することが出来れば面白いと考える. 今一度これまでの古典的な成果を見直すことから始め,研究をすすめていく.キャリバーについての研究は,余り多くの研究者が取り組んでいない分野でもあり,まだまだ発展させる余地がある.モジュラー関数との関連を見出すべく,関連研究者と議論を進める.多重ゼータ値関連の研究も,本研究に活かせるところは活かし,引き続き推進していく.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により,研究集会がことごとく中止,またはオンラインとなったのが最大の理由である.研究打ち合わせも,出張の制限により,延期,オンラインでの打ち合わせを余儀なくされ,予算を必要とする機会が格段に減った. 次年度,状況が許せば,村上友哉や水野らとの議論のための旅費に予算を使用,また,外国渡航が出来る状況にまでなれば,Zagierや William Dukeとの議論のため,ドイツやアメリカに渡航もしくは招聘を行う.また,研究補助のためにポスドクを時間雇用することも視野に入れる.
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Research Products
(18 results)