2021 Fiscal Year Research-status Report
Rotational energy level structure of molecules in a high energy region
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21K18143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 宗良 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20373350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深堀 信一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10802142)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 自己位相変調 / チャープ率 / ストレッチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高強度光を用いて回転超高励起状態を生成し,そのエネルギー準位構造を調べることを目的としている。回転超高励起状態の生成にはoptical centrifuge光が必要となるが,従来の方法では多数の回折格子を通すため効率が悪く,また装置のサイズが大きくなってしまう。このため,我々は自己位相変調(SPM)を用いてoptical centrifuge光を作ることを目指した。このため,初年度は回転超高励起状態を生成するための光源開発を行なった。ここでは,チャープ率の異なる二つのpsパルスの生成とその評価を目指した。当初は,フェムト秒増幅器において増幅後のpsパルスを二つに分割し,そのうち一つを水の入った石英セルに集光しSPMを引き起こし,バンド幅を広げチャープ率を増大させる予定であった。しかし,この手法を用いたところSPMによるバンド幅の広がりが小さかったため,一度コンプレッサーを通してfsパルスとしてからSPMを誘起させた。その結果,バンド幅を30 nm程度広げることができた。この光を新規に作成したストレッチャーで数百psのパルスへ伸長させることによって,異なるチャープ率を持つ二つのpsパルスを生成することができた。これらの光は相互相関測定(XFROG測定)によって評価した。また,SPM試料を重水でも行なったが,光の透過率では改善が見られたもののSPMによるバンド幅の広がりに大きな相違は見られなかったため,現在は入手しやすい水を用いて実験を行なっている。これらの光源開発に加えて,直線偏光を用いた高強度光によるNO分子およびH2O分子の回転励起の実験・解析を行い回転高励起状態の生成を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェムト秒チタンサファイアレーザーからの出力(780 nm, 25 fs, 3 nJ/pulse,90 MHz)をストレッチャーによって数百psまで伸長させ,その後,再生増幅器およびマルチパス増幅器を通して10 mJ/pulse(10 Hz)まで増幅した。このうち,一部の光を100 fsまでパルス圧縮し, XFROG測定を行うことで増幅後のパルス幅を約200 psと決定した。また,パルス圧縮した光を水を封入した石英セルに通すことによって,自己位相変調(SPM)させバンド幅を広げた。SPMによって生成した光を新しく作成したストレッチャーに通すことによって数百psまで伸長させた。パルスのXFROG測定により大きなチャープ率を持つ200 psのパルスの生成に成功した。これによって回転励起に必要な異なるチャープ率を持つ二つのパルス対を生成することができた。また,SPMの試料として通常の水では用いた光の波長領域(780 nm)において吸収が見られるため,吸収の影響を避けるために重水でも実験を行なった。透過効率は重水の方が10 %程度良くなったが,バンド幅の広がりには大きな差はでなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,昨年度に開発した光源について,SPMの入射光強度依存性を調べて,パルス幅を一定にしたままチャープ率を変化させられるように改良を加える。その後,開発した光源を用いて,チャープ率の異なるパルス対を1/4波長板を用いてお互いに反対向きの円偏光とし,時間的に重ね合わせることによってoptical centrifuge光を作る。この光をNO分子に照射し回転励起させ,ns色素レーザーによる共鳴多光子イオン化法によりイオン化させ,イオン収量の波長依存性から励起スペクトルを測定する。得られたスペクトルから,optical centrifuge光によって励起したNO分子の回転状態分布の計測を行う予定である。順調に進めば,optical centrifuge光のパラメータ(強度,チャープ率やバンド幅)に対する回転励起依存性の測定を行う。そして可能な限り高い回転状態の生成を実現する。また,並行して作成した光をモデル化し,回転励起の数値計算も進めてゆく。
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Causes of Carryover |
当初計画において,新しい光源を作成するために空間光変調器の購入を予定していたが,研究を進めていく中で代替する他の方法(空間位相変調SPM)を着想したため,装置の購入を見送って研究を進めている。この分の費用については,昨年度実験をする上でレーザーの調子が悪く,複数回にわたって業者による調整をしてもらっておりこれに当てた。次年度使用額については,SPMを用いた新しい手法で必要な光学部品に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)