2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18152
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
粟木 久光 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (30252414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 浩文 中部大学, 工学部, 教授 (20282098)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | X線望遠鏡 / 炭素繊維強化プラスチック / 高角度分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙は活動的な現象に満ちており、X線を使った宇宙観測は活動的宇宙の解明に大きく貢献してきた。X線撮像観測ではX線望遠鏡が大きな役割を果たしてきたが、X線望遠鏡、特に硬X線望遠鏡の製作は難しく、大面積での高角度分解能化は、いまだ、道半ばというのが現状である。本研究では、NuSTARの角度分解能を超えた過去最高の反射鏡を作成すること(ステップ1)、さらには、その上を行く10秒角の結像性能をもった望遠鏡の製作に挑戦すること(ステップ2)である。本研究による高角度分解能硬X線望遠鏡製作技術の確立は、硬X線撮像観測の道をひらき、高エネルギー宇宙への窓を開くものとなる。 令和3年度は、ステップ1達成のための現有の精密金型を用いて、高角度分解能化を目指した開発を行った。我々は軽量高性能望遠鏡開発のために炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を基材とし、その上に超薄板ガラスを貼ることで反射面を形成する。本研究以前では、結像性能が約150秒角であり、最も良い箇所で100秒角であった。我々は、表面形状劣化原因の1つを突き止め、それを軽減することで反射鏡の大半の領域で120秒角以下、一部ではるが約53秒角の性能を実現した。53秒角はステップ1の目標であった60秒角を切るものである。 一方で、ステップ2に向けての超精密金型(目標加工精度:PV < 100 nm)の加工準備も行なっている。この目的のために中部大学の鈴木教授を分担者に加えた。現在、超精密加工のための金型の下加工ならびにNi-Pのメッキが終了し、金型の超精密加工を待つ段階である。この金型の形状を忠実に再現した反射鏡が作られれば原理的に5秒角程度の角度分解能が可能となる。 以上の研究内容は、大気球シンポジウムで将来の気球実験計画を目指した報告の中で発表するとともに、宇宙科学シンポジウムや高エネルギー宇宙連絡会の研究会にて報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステップ1の目標は結像性能 60秒角を持つ反射鏡を現有の金型を利用して実現することにある。現在、結像性能劣化の対策を施すことにより、反射鏡の一部ではあるが60秒角を切るところに達しており、この対策が有効であることを示すことができている。ただし、反射鏡全面に及んでいないことから、まだ、不十分なところもある。不十分な理由はガラスをCFRP基板に接着剤で貼り付けるときの条件出しがまだ十分に行われていないことに起因していると考えており、今年度、条件出しを行う予定である。 ステップ2においては、超精密加工を施した金型の製作が本研究の鍵となる。このためにX線望遠鏡金型の超精密加工の実績を有する中部大学鈴木教授と共同で研究を進めることとした。スムーズに研究が進められるように両者の間で共同研究契約も結んでいる。令和5年度から本格的に進めることができるように、金型の材料、下加工、Ni-Pメッキの業者と連携し、超精密加工前の下準備作業を終えている。現在、超精密加工機の調整等を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
ステップ1に関しては、反射鏡の一部ではあるが60秒角を切ることができたことから、今年度は接着剤の硬化条件の精査を行い、60秒角以下の領域を反射鏡全面に広げる。硬化時の加圧条件が反射鏡上の良好な結像性能の領域を決めることが予想されるので、超薄板ガラスを貼り合わせるときの加圧条件を調査する。この開発研究は、CFRP加工専門業者と共同で行なっており、両者で技術情報の交換を行いながら進めていく予定である。 また、ステップ2に関しては、分担者である鈴木氏が実施する予定である。この加工にあたっては加工機上の形状測定も重要になることから、この整備も併せて行う。また、令和3年度から進めてきた超精密金型の加工にはいくつかの課題も見つかっている。これらの課題をまとめ、その対応策を検討し、それを踏まえた上で、もう一台超精密金型を製作する予定である。これにより技術の確立をはかりたい。このための準備を進捗状況で説明した業者と連携して進める。 また、創出した成果については積極的に公表する予定でおり、今年度はSPIE国際会議などで報告する予定にしている。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で出張回数が減少したこと、ならびに、インバー材での超精密金型の試作が初めてであったこともあり、当初想定していなかったアクシデントが発生する可能性があった。その対策費用を確保する目的で、形状測定用レーザー変位計を令和3年度に購入せずに、しばらく現状のものを使用することとした。これまでのところ超精密金型の加工は大きなトラブルもなく進んでおり、一通り加工が終了した際に、先送りしていた形状測定システムの整備を実施する。
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