2021 Fiscal Year Research-status Report
最強ウイルスバスター微生物による暗黒の底生生態系に潜むウイルス防御共生の実証
Project/Area Number |
21K18156
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高井 研 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門, 部門長 (80359166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 善弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 主任研究員 (10399561)
吉田 光宏 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 准研究員 (60565555)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 超深海海溝 / 暗黒の生態系 / ウィルスバスター微生物 / 防御共生 / CRISPR/CAS |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は研究調査船「よこすか」と有人潜水船「しんかい6500」による琉球海溝調査を行い、水深6500mに至る様々な環境に生息する多様な底生動物の網羅的な採取に基づく、消化管各組織・部位毎の微生物群集のメタゲノム解析を予定していた。しかしながら、2021年度夏頃に発生した新型コロナウィルス感染症の第3波感染拡大によって航海が中止になった経緯がある。そのため2021年度は、過去の深海潜航調査や2020年度や2021年度に別の航海で得られた多種のナマコを中心とした底生動物について、消化管各組織・部位毎の微生物群集のメタゲノム解析を行った。計51個体の底生動物の消化管壁に共生する微生物群集において、9個体のみがTenericutes綱バクテリアを保持していること、およびそのうち1個体のみで多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を有すること、が明らかになった。当初の予定では、ナマコをはじめとした多くの底生動物のほとんどの個体中の消化管組織において、多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を持つTenericutes綱バクテリアが見つかると予想をしていたが、予想と大きく異なる結果が得られたことになる。今後、系統的に採取された底生動物の試料において同様の結果が得られた場合、海洋生態系における防御共生という概念を根底から再考する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は研究調査船「よこすか」と有人潜水船「しんかい6500」による琉球海溝調査を行い、水深6500mに至る様々な環境に生息する多様な底生動物の網羅的な採取に基づく、消化管各組織・部位毎の微生物群集のメタゲノム解析を予定していた。しかしながら、2021年度夏頃に発生した新型コロナウィルス感染症の第3波感染拡大によって航海が中止になったため、生息深度別や種別といった網羅的かつ系統的な底生動物の試料を対象とすることができなかった。代替案として、過去の深海潜航調査や2020年度や2021年度に別の航海で得られた多種のナマコを中心とした底生動物を対象とした。その結果として、予想外の低いウィルスバスター共生微生物候補の出現率となった可能性も考えられる。さらに多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を持つTenericutes綱共生バクテリアゲノムは今のところ1個体のナマコに限定され、比較ゲノムによるRISPR/Cas領域の機能推定や標的ウィルスの特定などの解析に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
中止となった研究調査船「よこすか」と有人潜水船「しんかい6500」による琉球海溝調査は、最速でも2023年度まで機会がないため、引き続き過去の深海潜航調査や2022年度の別の航海で得られた多種のナマコを中心とした底生動物を対象としたメタゲノム解析を行い、Tenericutes綱共生バクテリアの存在が深海ナマコや底生動物に遍在する現象なのか、あるいは共生ではなくウィルス感染症のような現象なのかについて、消化管内微生物群集メタゲノムデータの生物情報学的アプローチによるから再考する。一方、唯一得られたこれまでに最多のCRISPR/Cas領域の反復配列を有するTenericutes綱共生バクテリアについて、ゲノム解析の結果に基づいた機能推定と消化管内容物のウィローム解析との比較を通じて、共生微生物と堆積物ウィルスとの相互作用についての考察を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度に予定していた航海が中止になったことにより、航海消耗品や旅費の支出が大きく減じることになった。また、本研究を中心的に進めるポスドク研究員の採用と着任が当初の予定よりも遅れたため人件費として計上していた支出が減ったことも理由としてあげられる。2022年度には、遅れた計画を加速させるためにメタゲノム分析を外注にすること、および別の航海での試料採取の機会を作ること、等の方策を計画しており、そのための分析費や旅費として使用する計画である。
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