2022 Fiscal Year Research-status Report
最強ウイルスバスター微生物による暗黒の底生生態系に潜むウイルス防御共生の実証
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21K18156
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高井 研 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門, 部門長 (80359166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 善弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 主任研究員 (10399561)
吉田 光宏 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 准研究員 (60565555)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 超深海海溝 / 暗黒の生態系 / ウィルスバスター微生物 / 防御共生 / CRISPR/CAS |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も実施予定であった研究調査船「よこすか」と有人潜水船「しんかい6500」による琉球海溝調査を行うことができなかった。水深6500mに至る様々な環境に生息する多様な底生動物の網羅的な採取を行い、消化管各組織・部位毎の微生物群集のメタゲノム解析を行うことは2024年度に延長されることとなった。そのため2022年度は、過去の深海潜航調査や2022年度に別の航海で得られた多種のナマコを中心とした20個体以上の底生動物について、新たに消化管各組織・部位毎の微生物群集のメタゲノム解析を行った。約70個体の底生動物の消化管壁に共生する微生物群集において、20%程度の個体がTenericutes綱バクテリアを保持していること、およびそのうち3個体が多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を有すること、を明らかにした。この結果から、消化管組織において多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を持つTenericutes綱バクテリアを共生させるナマコや底生動物の確率は研究開始まえに想定していたよりも遥かに低いことが明らかになった。一方で、多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を持つTenericutes綱バクテリアを共生させるナマコは全て深海に生息する個体であり、防御共生は深海性ナマコ特有の現象であることも予想された。また2022年度は、共生菌を有するナマコ消化管内容物や堆積物中のメタウイローム解析を実施し、Tenericutes綱共生バクテリアのCRISPR/Cas領域に記録されたウイルスの痕跡と消化管内容物や堆積物中に優占するウイルスとの関わりを調べた。しかしながら、CRISPR/Cas領域に残されたウイルス遺伝子の痕跡と消化管内容物や堆積物中に優占するウイルス間に明らかな関係性を見出すことはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度も計画していた調査を行うことはできなかったものの、過去の深海潜航調査や2022年度に別の航海で得られた多種のナマコを中心とした20個体以上の底生動物について研究を進め。多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を有する共生菌の特定に成功し、防御共生が深海性ナマコ特有の現象である可能性が明らかになった。今後、多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を持つTenericutes綱バクテリアを共生させるナマコについての記載的な論文発表の目処があったことにより、研究計画は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
未だ実施できていない研究調査船「よこすか」と有人潜水船「しんかい6500」による琉球海溝調査は、最速でも2024年度まで機会がないため、引き続き過去の深海潜航調査や2023年度の別の航海で得られた多種のナマコを中心とした底生動物を対象としたメタゲノム解析を行い、Tenericutes綱共生バクテリアの存在が深海ナマコや底生動物に特有の現象であることの確証を得る。また多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を持つTenericutes綱共生バクテリアのナマコ消化管での局在性を明らかにすることで、ナマコ消化管での共生菌なのか、あるいは堆積物に生息する原生生物の共生菌から由来するものかについて検証する。一方、これまでに得られた多数のCRISPR/Cas領域の反復配列を有するTenericutes綱共生バクテリアについて、記載的な論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度には、当初想定していなかった雇用していたポスドク研究員の転出や航海の延期があり、人件費や物品費、旅費の使用に変更により、4,095,239円の次年度使用額が生じた。この次年度使用額と2023年度の交付額を合わせて、新たに雇用する本研究を主体的に進める研究者の人件費、各種消耗品費、試料確保のための航海に参加する旅費、および論文出版費に用いる予定である。
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