2021 Fiscal Year Research-status Report
The Fundamentals of Engineered Surface Metrology based on Quantum Effect of Photon Scattering
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21K18159
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70243178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 康弘 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40374152)
上野原 努 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10868920)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | エンジニアード・サーフェス / ナノ表面トポグラフィ / 光子散乱 / 量子的ゴーストイメージング / 光スピンホール効果 / 散乱ドレスト光子 / ラマン分光 / 量子もつれ光子対 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,代表サイズがナノメートルオーダでダイナミックレンジの広いナノ表面トポグラフィのスケール階層的な測定量を統合するエンジニアード・サーフェス・メトロロジーの基盤を確立するため,ナノ表面トポグラフィによる光子散乱の根源的な機序を解明し,光子散乱の量子効果(量子もつれ光子対,光スピンホール効果,散乱ドレスト光子)に基づく光子散乱表面計測の学理構築を目的としている.本年度は,量子的ゴーストイメージング(QEP-GI)の基本原理を確立するため,量子もつれ光源の基本特性に基づいたQEP-GI計測システムの構築と計測原理の検証実験を遂行した. 量子もつれ光子は,互いにもつれ状態にある光子対にのみ空間的な相関があるため,迷光には不感でありノイズ耐性に優れた高感度なイメージングが可能となる.一方で,量子GIの空間分解能は,被撮影物体を照明する光子対の分布領域に依存する.そこで,量子もつれ光源,単一光子検出器および時間相関単一光子計数機などからなるQEP-GI光学系および計測システムを設計・試作し,基本動作検証実験を行った.量子GIでは,量子もつれ光子対の空間的な相関を利用する.そこで,量子もつれ光子対は2次の非線形光学効果により発生し,光子対を観測系と参照系の2光路に分割した.観測系で被撮影物体を照明する光子分布は,参照系での光子分布と空間的な相関があるため,参照系での2次元走査による同時計数計測を行った. 基礎実験の結果,量子もつれ光子対の空間的な相関を確認した.さらに,量子もつれ光子対の空間的相関を用いた量子GIを行い,量子GIによって得られた画像はサンプルの開口の形状と概ね一致することを確認した.また,サンプルの光路を小さくすることで擬似的な縮小投影を行った.その結果,サンプルに照明する光子分布領域を小さくすることで取得画像を拡大できることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光子散乱量子効果計測システムを構築し,量子もつれ光子対,反射光子,散乱ドレスト光子とナノ表面トポグラフィの相互作用を解明するためには,その技術基盤となる量子的3Dゴーストイメージング法の基本原理を確立する必要がある.そこで本年度は,量子的ゴーストイメージング(QEP-GI)の基本光学系および計測システムを設計・試作し,それを用いた基礎実験を遂行してQEP-GIの基本特性を明らかにした.まず,光子対の同時計数計測によって,生成した量子もつれ光子対に空間的な相関があることを示した.量子もつれ光子対の発生には,非線形結晶のType-Ⅰ位相整合自発パラメトリック下方変換(Spontaneous Parametric Down Conversion, SPDC)を用いた.量子もつれ状態にあるSPDC光子対は,入射光子の光軸方向を軸として対角線上に発生する.そこで,光子対の位置関係を実験にて確認した.その結果,参照系の光子と時間相関性のある観測系の光子は,鉛直逆方向,すなわち,入射光子の光軸方向を軸として対角線上に光子対が出射されていることが明らかになった.さらに,サンプルに照明する光子分布領域を走査面での光子分布領域よりも小さくすることで,サンプルの拡大画像が取得できることを示した.しかし,QEP-GIの解像度を明らかにするためには,光路差の変化や基本サイズが異なる測定サンプルによる測定が不可欠であるが,コロナ感染による実験の停滞によって十分な検証データが得られていない.さらに,量子もつれ光子対を利用したQEP-GIに2光子量子干渉による変位計測を導入することによって,測定試料の3次元的な情報も取得することができる3D-QEPGI計測システムの設計・試作と計測原理の検証実験が未着手であることから,進捗状況として「やや遅れている」の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
提案する新奇な3次元ゴーストイメージングに基づいたナノ表面トポグラフィ計測の基本原理は,アイドラ光子を散乱光子,シグナル光子を参照光子とする,量子的ゴーストイメージング(QEP-GI)に2光子量子干渉による変位計測を導入することによって3次元QEP-GI:3D-QEP-GIを実現するものである.QEP-GI光路系は,走査系(将来的には,面型の検出器を利用する)で検出されるアイドラ光子とシグナル光子の同時計数によって“画像化”される.さらに面法線方向の走査系によって表面深さ方向のスライス画像が取得される.面法線方向の走査距離の測定はヘテロダインレーザー干渉計(精度0.1nm)を用いる.そこで,次年度の前半は,2光子量子干渉による変位計測を導入した計測システムを設計・試作し,3次元表面計測の基礎実験を集中的に遂行することにより測定試料の3次元的な情報が取得できることを実証する.さらに,量子ドット超格子などのエンジニアード・サーフェスのナノ表面トポグラフィ計測への適用可能性を実証する. 次に,ナノ表面トポグラフィによる光子散乱の根源的な機序を解明して,光子散乱の量子効果(量子もつれ光子対,光スピンホール効果,散乱ドレスト光子)に基づく光子散乱表面計測確立への展開を図る準備として,3D-QEP-GIによる計測データを基準とする,光スピンホール効果による表面トポグラフィ計測原理を確立し,量子的偏光解析法の基本特性を明らかにする.具体的には,3D-QEPGIの計測原理に基づいたクラスタ・レベルの表面トポグラフィ計測実験を遂行する.さらに,冷却CMOSカメラシステムを利用して表面での反射前後で偏光状態が変化したときの光子の反射位置シフトを検出する,光スピンホール効果計測システムの構築し,基本動作検証実験を行い,光スピンホール効果による表面トポグラフィ計測原理の有効性を示す
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Causes of Carryover |
年度の後半頃から自然災害(新型コロナウィルスCOVID-19のパンデミック)が急拡大し,参加を予定していた学会や研究会などが中止や延期となり,さらに学生の登校制限や研究室活動の制約による当初実験計画の遅延が生じたことが主な理由である.また,自然災害の影響で当初計画していた新たな光学デバイスの納期が大幅に遅くなったため,年度内に新規計測システムの設計・試作を進める十分な時間を確保できないことが確実になった.そこで研究室のリソースを使って既設の基礎実験光学系を改良することにより,なるべく量子的ゴーストイメージング(QEP-GI)の基礎実験データを多く取得することに注力する方針転換を行った.また,基礎実験結果に新たな展開があり,急遽実験方法の変更や計測データ処理アルゴリズムの再構築を行ったことも,新規計測システムの設計・試作に遅延が生じた理由のひとつである.今後の対策として,前年度納品予定であった新たな光学デバイスと翌年度導入予定としていた光学機器を,同時かつなるべく迅速に手配を進めることによって,新規計測システムの設計・試作を効率よく進める.さらに,新規計測システムを利用した実験を加速させ,新たな研究展開を図る.次年度の予算は,延期やオンラインとなった学会参加費用や海外渡航費および新規な実験デバイスの費用などに有効活用する計画である.
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