2022 Fiscal Year Research-status Report
Relay runner-like spin transport with electron-hole exchange interaction and its application to magnetologic gates
Project/Area Number |
21K18166
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
酒井 政道 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40192588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉住 年弘 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (00838039)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 電子-正孔補償金属 / 電子-正孔スピン交換相互作用 / スピン流 / スピン注入 / 近藤効果 / 排他的論理和ゲート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電子間交換相互作用にもとづくバトンリレー型スピン中継機能をスピントロニクスデバイスに実装することを目指している。 電子正孔補償金属(EHCM)としてPtを使った実験を2021年度に着手したが、スピン注入源として、希土類遷移金属フェリ磁性体を使った場合と、NiやFeの場合では、スピン注入由来の逆スピン効果が全く異なる様相で観測された。その原因を明らかにするために、2022年度には、GdFe合金を使って、GdとFeの組成比を連続的に変化させて、スピン注入効果を組成比の関数として調べる研究に着手した。 同じくEHCMであるSnを使った研究に着手した。Snは平坦な表面を得るのが困難とされてきた材料である。実際、私たちが電子ビーム蒸着法で成膜した厚さ約300nmの金属相β-Snの表面には約40nmの高低差による凹凸があった。Hall効果測定によるとHall係数は10の-12乗台と云う小さな値の為、Hall電圧の検出が困難であった。これはβ-Snでは電子濃度と正孔濃度が等しいだけでなく、電子移動度と正孔移動度も可成り接近しているのが原因と考えられる。このβ-Snに強磁性体を介してスピン注入する研究は素子製作も含めて現在進行中である。 EHCMや半金属などのアンビポーラ伝導体(AMB)と強磁性体(F)との接合構造におけるスピン注入のしくみを理解することを目的として、F/AMB界面に発生するスピン共役電圧に関する理論計算を行った。従来の理論は、強磁性層、非磁性層共にキャリヤが電子の場合に限られていたので、非磁性層のキャリやが正孔のみならず、アンビポーラな場合に拡張した。スピン緩和の主要因が電子-正孔スピン交換相互作用のとき、界面から離れたEHCM領域でも、化学ポテンシャルのスピン分裂が減衰せずにほぼ一定の値で残っていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、電子正孔補償金属(EHCM)としてPtを使った実験を2021年度に着手したが、スピン注入源として、希土類遷移金属フェリ磁性体を使った場合と、NiやFeの場合では、スピン注入由来の逆スピン効果が全く異なる様相で観測された。その原因を明らかにするために、2022年度には、GdFe合金を使って、GdとFeの組成比を連続的に変化させて、スピン注入効果を組成比の関数として調べる研究に着手した。そのため、EHCMのスピン輸送に対する磁性不純物の影響を調べる実験が停滞気味なので、進捗状況として「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
電子間交換相互作用にもとづくバトンリレー型スピン中継をスピントロニクスデバイスに実装する方法を開拓する。引き続き、電子正孔間のスピン交換相互作用に注目するが、2022年度に行った理論計算によると、F/N構造のNに対して電子正孔補償金属(EHCM)を使い、そのスピン緩和が電子正孔間スピン交換相互作用にもとづくときには、界面から離れたEHCM領域でも、化学ポテンシャルのスピン分裂が減衰せずにほぼ一定の値で残っていることが予測される。これはF側のスピン偏極状態がEHCM側に効率よく転写されていることを意味する。また、計算によれば化学ポテンシャル勾配によって電子スピン流と正孔スピン流が発生するが、それらの向きが互いに反対であるため、正味のスピン流が消失することが分かった。 2023年度以降には、強磁性体のスピン偏極情報が、EHCM領域を介して、EHCMに隣接する単一バンド伝導体に効率よく伝達されるかどうかを調べると共に、非磁性領域にEHCMを使った2重ヘテロ構造F/N/Fを製作し、磁気抵抗(MR)比測定の準備に取り掛かる。さらに、これまでの研究過程で未解決のままになっている(i) EHCMへの磁性不純物添加効果(近藤効果)および(ii) EMCMへのスピン注入効果に対する、希土類遷移金属フェリ磁性体と強磁性体(Feなど)の違いについて、その原因調査に取組む。
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Causes of Carryover |
当初の予算執行計画に沿って、2022年度に電子ビーム蒸着源とその電源を購入した。成膜用の真空チャンバーは特注品であるため、デザインと設計に時間を必要とした結果、2022年度内の納品が困難と判断されたので、その分、次年度(2023年度)使用額が発生した。
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