2022 Fiscal Year Research-status Report
都市排水中の痕跡による潜在害獣・害虫の効率的検知技術の確立
Project/Area Number |
21K18172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 典之 東京大学, 環境安全研究センター, 教授 (30292890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛野 智宏 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (90624916)
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
加藤 裕之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (20897912)
Pham Dung 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (30809215)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 環境DNA / 衛生害獣 / 雨天時排水 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市内に潜んでいる害獣・害虫を、効率的に検知する技術の確立が本研究の目的であり、面的に自動的にこれらの生物の痕跡を収集する仕組みとして都市排水システムに着目する点が特色であり、以下の2つの項目で研究を進めている。本年度は(2)を中心に研究を進めた。 (1)潜在害獣・害虫痕跡の検出手法の検討 これまでに手法として確立したげっ歯類、猫、ハクビシンに加えて、都市排水試料採取候補地点での害獣発見状況からアライグマも検出できるように検出体制を確立した。前年度に体毛試料の遺伝子抽出条件を検討したことを踏まえ、今年度は試料採取方法についても検討を進め、目幅250μmのネットにて排水路内で雨天時排水を直接濾過し固形物のみを回収する方法を検討し、その有効性が示唆された(後述)。 (2)都市排水試料の入手と潜在害獣・害虫痕跡の検出、効率的モニタリング手法の検討 雨天時排水試料の採取を3地点において各施設管理者の協力のもと試みた。げっ歯類、ハクビシン、アライグマ、猫のリアルタイムPCR法による検出を行ったが、すべての排水試料において不検出であった。一方で(1)のネット捕捉固形物から抽出した遺伝子からはげっ歯類が検出でき、今後の試料採取方法への重要な示唆が得られた。この試行においては降雨時にマニュアル作業でネットで水をろ過したが、この結果を踏まえて次年度は降雨時に無人採取できるように排水路形状に合わせ縫製したネットを設置する予定である。また初年度に(1)の検討において確立したハクビシン検出技術を確認するため、初年度に採取済みの動物園飼育施設周辺の試料中のハクビシンDNAを定量した。飼育施設樹木下の土壌及び清掃排水中浮遊物質からはそれぞれ5.01×10^5,8.16×10^5 copies/gのハクビシンDNAが検出でき、雨天時流出試料の分析の意義を支持するものとして国内学会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に確立した害獣分析方法をさらに拡充し、実際の雨天時排水を採取するべく複数の施設管理者に交渉し、計3つの試料を得ることができた。雨天時排水試料採取は、一定程度以上の降雨強度と同時に、作業の安全性から平日・日中に限定されるため、令和4年度は調査可能な降雨が少なかったが、今年度の成果で、降雨時に無人採取できるように排水路にネットを設置するように変更する意義が見いだすことができた。これにより次年度は多くの試料が採取・分析でき、本研究で提案する技術の有効性の検討が大きく進む見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記載した通り、雨天時採水の困難さを無人でのネットによる固形物捕捉という方法に変えることで、今後は継続的に雨天時試料を採取する目途が立った。採取場所の管理者との交渉はほぼ完了しており、最終年度に貴重な試料が採取できる見通しである。また、採取した固形物からの効率的な遺伝子抽出(固形物の分画等)についての検討を進め、より高感度に害獣遺伝子を検出する方法を確立する方針である。
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Causes of Carryover |
採水準備をして待機していたものの採水可能な平日・日中の降雨が限られており、またそれらの試料の多くが対象遺伝子が不検出であり詳細分析を実施することができなかったため、当初予定していた分析費用の一部を繰り越した。一方で、本年度の研究から新たな試料採取手法が見いだされ、その採取器具作成およびそれにより採取できる多くの試料(十降雨以上×複数地点)の分析に多くの予算が必要となり、本年度の繰越額を充当する。
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