2021 Fiscal Year Research-status Report
周波数変調/同期法を利用したナノ力学による原子レベルの顕微鏡/分光法の開拓
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21K18191
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新井 豊子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20250235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富取 正彦 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10188790)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 周波数変調原子間力顕微鏡 / 赤外分光 / ナノ力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を基に、赤外光を照射した際の試料表面の分子の分極変化を原子レベルで力学的に高感度検出する赤外分光法(探針振動同期検波赤外分光法(TS-IR))を開発する。FM-AFMは、カンチレバーをその共振周波数で励振し、探針試料間の相互作用力(保存力)による共振周波数変化から試料の形状像を得、非保存性の相互作用力によって散逸される力学的エネルギーも同時に検出できる。ここで、カンチレバーの振動に対して位相を180°ずらして赤外光照射をオン・オフすることで、赤外光照射による分子の分極変化を散逸エネルギー信号として検出する。 赤外光源としてパルス量子カスケードレーザーを選定し、浜松ホトニクス社と打ち合わせし、試料に対しての波数帯およびカンチレバーと同期発振させるための特別仕様を検討した。 レーザーは次年度に納品されるため、FM-AFM探針の振動に同期させて探針-試料間にパルス電圧を印加し、散逸エネルギー信号の変化から表面の局所電荷密度を検出する探針振動同期検波法の研究を開始した。探針振動と同期(位相180°)させたパルス電圧を印加して、FM-AFM原子像を観察しながら散逸エネルギー信号を2次元マッピングし、原子レベルの変化を検出することができた。 本研究では、音叉型水晶振動子を基体とし金属探針を形成した力センサーを用いる。タングステン線を、酸化性ガス(水素と酸素の混合ガス)の炎の中に入れるとタングステンの酸化・酸化物の昇華が繰り返され、エッチングされる。この炎エッチング法によりタングステン探針を作製し、音叉型水晶振動子に導電性エポキシ接着剤を用いて接着した。形成されたタングステン探針をオージェ分光顕微鏡により解析したところ、導電性エポキシの影響でタングステン探針に炭素が付着していることが分かった。接着剤方法を再検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子カスケードレーザーは、特別仕様で浜松ホトニクス社で開発してもらうため、仕様策定から納品までは半年以上を要する。これは研究計画段階で既に計画していたことであり、初年度は、予備実験・調査および綿密な打ち合わせを行い仕様策定して、2年度目の5月に納品予定となれば、順調なスケジュールと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1075±100cm-1波数可変量子カスケードレーザーの同期発振方法の検討、FM-AFMの探針試料間への光の集光方法の検討から始め、テスト試料として選定したマイカ基板を用いて、FM-AFM/TS-IR能力を実証する。
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Causes of Carryover |
レーザーからAFMへ赤外光を導入するための機構部品・光学部品の選定に時間を要した。発注と納品が年度をまたぐことを避けるために次年度発注とした。
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Research Products
(10 results)