2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K18202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 一也 京都大学, 理学研究科, 教授 (30300718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 弘 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60312253)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 赤外レーザー / 脱離 / 時間分解分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず光刺激脱離を対象としたレアイベント観測システムの構築を目指した.新たに超高真空チェンバーを立ち上げ,金属基板上に蒸着作成した氷薄膜に中赤外フェムト秒レーザーパルスを照射して,その光誘起脱離を四重極質量分析計により観測するシステムを構築した.ターボ分子ポンプによる排気により3×10-8 Pa程度の超高真空を実現し,液体窒素冷却した白金単結晶基板上に氷薄膜を蒸着した.水のOH伸縮振動領域に合わせた赤外レーザーパルスを集光することで,真空中への水の脱離が起きることを,質量分析器の信号により確かめた.また,その脱離収率が,レーザー強度に非線形に依存することを見出した.加えて,赤外レーザーパルスを2つに分け,その相対遅延時間を光の位相を制御した形で掃引するための光学系を新たに構築した.この光学系を真空チェンバーに組み込むことで,フーリエ分光の要領で赤外誘起脱離過程のアクションスペクトル計測を試みる予定である. また,これまでに実績のある超高真空下での2次元電子分光計測システムの計測感度を改善するために,検出系の改善を行った.あらたに受光面積の広いNMOS半導体検出器を導入し,これまで問題であったレーザーパルスごとの空間的なビーム形状の揺らぎに伴う信号強度の揺らぎを大幅に軽減する計測系を構築した. 加えて,レアイベント観測対象としての金属微斜面での水吸着構造についての研究を行った.位相敏感和周波発生振動分光法を用いてPt(533)面における,ステップサイトの水の1次元構造について計測した結果,ステップにおいてOH基を基板側に向けたH-downの構造が支配的であることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レアイベント観測のための原理検証実験として,光刺激脱離を対象としたパルス相関測定型のアクションスペクトル計測を行う準備は順調に進んでおり,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き,光刺激脱離を対象とした,パルス相関型のアクションスペクトル計測法を確立し,氷表面の脱離現象に適用する.水素結合バンドの中の脱離現象を引き起こすカギとなる振動数領域を特定し,その時間相関プロファイルから,脱離に至る過渡状態の分光情報を取得し,本計測原理の有効性を示す.加えて,新規に極短パルスレーザーを導入し,近赤外パルス列を発生させる光学系を構築し,これを電極反応セル中の金属電極表面に照射する光学系を構築する.パルス列の時間間隔を掃引しながら,電極反応に伴う電流をモニターすることで,光誘起の電極反応効率のパルス列間隔依存性を明らかにする.電極反応における過渡状態に対して,パルス列による振動励起の効果によって反応収率の変化が起きる条件を探索する.パルス列の間隔と収率変調との相関を明らかにすることで,反応素過程の中間体についての分光情報が得られると期待される.
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