2021 Fiscal Year Research-status Report
Ultrafast spectroscopy of single photoresponsive proteins under fluctuation
Project/Area Number |
21K18203
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
倉持 光 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 准教授 (40709367)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 超高速分光 / 光応答性タンパク質 / 単一分子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の様な巨大な複雑分子はマイクロ秒からミリ秒スケールでの遅い大きな構造揺らぎを示す。光応答性タンパク質においては、こうした揺らぎに応答して内包された発色団分子の性質や局所環境、さらにはその反応性が大きく影響される。こうした揺らぎに応答して変遷する発色団の反応性を明らかにすることはその機能発現機構を理解するために欠かすことができないが、系のアンサンブル平均を観測する従来の時間分解分光法ではこれらの情報を得ることはできない。そこで、本研究では単一分子からの蛍光をプローブとする超高速分光装置を開発し、揺らぎとともに変遷する単一光応答性タンパク質の反応ダイナミクスの直接観測を目指している。 本年度は、この単一光応答性タンパク質の対する超高速分光を行うための基盤となる、顕微分光光学系の立ち上げを遂行した。具体的には、新たに共焦点顕微鏡を構築し、単一光子検出器と時間相関単一光子計数モジュールを導入することで、顕微鏡下において蛍光検出に基づく単一分子観測を行うためのシステムを構築した。高出力・高繰返しフェムト秒Ybファイバーレーザーの第2高調波(515 nm, 260 fs)を励起光とし、蛍光色素ローダミン6Gを参照試料として用いることで、装置性能の評価と最適化に取り組んだ。nMオーダーの希薄溶液に対する蛍光寿命・蛍光相関分光測定を通じて、構築した装置が単一分子を観測するのに十分な検出感度を有することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は共焦点顕微鏡を構築し、蛍光検出に基づく単一分子観測を行うための顕微分光システムの立ち上げを行った。実際に構築した装置を用いて行った希薄色素溶液に対する蛍光信号測定から、単一分子検出感度を確認することができた。これらの観測装置および計測技術は今後行う単一分子に対する超高速分光の基盤であり、本研究課題で掲げる目的を実現する上での重要な開発要素の一つであったが、これを無事に完了することができた。結果として、単一光応答性タンパク質の超高速ダイナミクス計測へと展開する準備が整いつつある。以上のように本研究課題は研究計画に従って順調に達成されており、よって現時点において“おおむね順調に進展している”と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では単一光応答性タンパク質の超高速分光を目標としているが、その前段階として、これまで構築してきた蛍光検出に基づく顕微分光装置を用い単一光応答性タンパク質の励起・発光スペクトル測定に取り組む。蛍光タンパク質や光受容タンパク質などを対象とし、室温における電子遷移エネルギーの揺らぎを捉え、時間分解測定に進む上で必要となる、揺らぎの時間スケールに関する基礎的な知見を得る。続いて顕微分光装置にポンプ光とプローブ光を導入し、超高速分光測定へと展開する。得られるデータをもとに、光応答性タンパク質の光反応初期過程が遅い時間スケールで起こる大きな構造揺らぎとどのように連関しているのか、実験的に解明する。
|