2021 Fiscal Year Research-status Report
Organic Thin-Film Superconductor Based on Electric Polarization
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21K18210
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安達 千波矢 九州大学, 工学研究院, 教授 (30283245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 敏則 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (40521985)
合志 憲一 九州大学, 工学研究院, 助教 (50462875)
中野谷 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90633412)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 有機超伝導 / CT錯体 / Ginzburg / Little / 二次元ペロブスカイト / 電子分極 / F16CuPc / mMTDATA |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、有機超伝導体は主にCT錯体を中心に、その可能性が1970年代から90年初頭に亘って幅広く検討されてきたが、極低温や超高圧条件が必要であり、室温有機超伝導体実現への道程はほど遠い状況にある。そのため、新規なメカニズムや材料・デバイス構成に関する斬新なアイディアが必要とされている。本提案では、Little及びGinzburgの2つの古典的なモデルを基礎に、近年、有機光エレクトロニクス研究分野で培われてきた新規な有機系CT材料や薄膜中で特異的に大きな分極(GSP: Giant Spontaneous Polarization)を示す分子系材料、さらには、近年、太陽電池等で大きな注目を集めている有機・無機ハイブリッドペロブスカイト構造を利用し、積層薄膜型の室温有機超伝導の実現に取り組む。具体的には電子分極層(P)/導電層(C)/電子分極層(P)を基本構造とし、薄膜導電層中の伝導電子と誘電層内の分極性分子との間で電子分極効果を発現することでクーパー対の形成を目指している。 本年度は、Littleのモデルとして、二次元ペロブスカイト構造を基礎に有機・無機材料成分の最適化について検討を行い、薄膜形成や単結晶形成を試み、電気物性計測が可能なデバイスを構築、基礎的な電気伝導性の確認を行った。また、Ginzburgのモデルにおいては、ドナー分子としてmMTDATAを、アクセプター分子としてF16CuPcを用いることで、積層薄膜構造において分子間CTを形成し導電性の著しい向上を確認した。今後、2種類の材料系において、電子分極の大きさを調整し、導電層内のクーパー電子対形成に繋げていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、Littleのモデルとして、2次元ペロブスカイト構造を基礎に有機・無機材料成分の最適化について検討を行い、薄膜形成や単結晶形成を試み、電気物性計測が可能なデバイスを構築、基礎的な電気伝導性の確認を行った。特に、薄膜形成の条件検討を進め、厚みが数100nmの単結晶薄膜を形成し、その上部に電荷注入電極として、様々な電極材料について検討を行い、MgAu合金が優れたオーミック接触を形成することを明らかにした。また、Ginzburgのモデルにおいては、ドナー分子(D)としてmMTDATAを、アクセプター分子(A)としてF16CuPcを用いることで、積層薄膜構造において分子間CTを形成し導電性の著しい向上を確認した。また、D-A界面においてCT形成の確認として、電荷移動を伴う吸収スペクトルの微弱な変化を確認することができた。さらに、積層薄膜デバイスにおける電流―電圧特性の温度依存性の測定から200K付近に変化点が観測され、導電機構の変化が生じていることが示唆された。現在、CT形成が温度依存性を有していることを想定している。Littleのモデルである2次元ペロブスカイト構造においては、単結晶を用いて導電性の検討を行ったところ、結晶の方位に依存して、伝導特性の変化が示唆されている。今後、温度依存性の評価も進め、有機配位子―無機間の分極効果の観点から導電機構の解明を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
Ginzburgのモデルにおいて、薄膜導電層としては、二次元ペロブスカイト超薄膜を中心に検討を進めてきたが、超伝導特性を示す金属、金属酸化物、硫化物等の二次元伝導体、π共役系が高度に発達した有機分子について検討を行う予定である。電子分極誘電層としては、これまでにOLEDの発光分子や電荷輸送分子で確立されたCT錯体形成に有効なドナー分子、アクセプター分子や大きなGSPを示す分子を中心に検討を行う。素子構成としては、電子分極誘電層(P)/導電層(C)/電子分極誘電層(P)を基礎とし、誘電体層としてD、A層を組み合わせることで、D/A、D/C、A/C、D/C/A、D/C/D、A/C/A型の2層型、3層型の素子構成について網羅的に検討を行う。様々な誘電体層の組み合わせによって電子分極の大きさを制御し、Tc上昇への影響を検討する。電子分極誘電層が片側だけの2層型においても、電子相関の発現が期待できるため検討を進める。また、導電層と誘電層の間に直接的な電荷移動が生じると超伝導特性の消失に繋がると考えられるため、必要に応じて導電層と誘電層の相互作用を制御するために“層間絶縁層”の導入を検討する予定である。 実験装置においては、吸収スペクトルの温度依存性の計測、極低温下まで冷却が可能なクライオスタットの整備を進め、円滑な実験環境を整備する。
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Causes of Carryover |
初年度は、有機CT系及びペロブスカイト系の材料選択に多くの時間が取られ、低温域における電気物性解析に十分進むことができなかった。次年度において、電気物性の計測系を整備し、予算を計画通りに使用する予定である。
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Research Products
(24 results)