2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the molecular mechanism of herbal medicine by the advances in computational mass spectrometry
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21K18216
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
津川 裕司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30647235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今見 考志 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, ユニットリーダー (30528344)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 生薬 / マルチオミクス / 質量分析 / 統合オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、質量分析インフォマティクスの技術開発を通じて統合オミクス環境を構築し、生薬甘草の薬理作用に関する分子メカニズムの解明を目指すものである。具体的には、甘草にはisoliquiritigenin(ILG)という抗炎症作用を示す天然物が存在するが、ILGの単剤投与ではなく、甘草エキスそのものを摂取する意義の科学的根拠は何なのか?という学術的問いに答えるための研究を行った。実験系としては、マクロファージ由来のRAW264.7細胞とリポ多糖(LPS)を用いた急性炎症モデルを用い、ILGもしくは甘草抽出エキス(GU)そのものを添加した場合の抗炎症効果を評価し、その作用機序をオミクス解析で評価した。 まず、ILGおよびGU両群において、LPSにより産生誘導されるインターロイキン(IL)-6の産生が有意に抑制されることがわかった。また、LPS投与後の0時間から24時間までの親水性代謝物(メタボローム)、脂質(リピドーム)、およびリン酸化プロテオーム解析を実施し、生薬成分投与の有無が代謝動態に及ぼす影響を調査した。この親水性メタボローム解析において、新しい質量分析インフォマティクス手法を開発した。これにより、既知分子の正確なアノテーションだけでなく、標準品ライブラリーに存在しないためこれまで同定できなかった分子の一部をアノテーションすることができるようになり、LPS投与特異的に増加する代謝物を新たに発見した。この成果は現在、論文投稿中であり、bioRxivに掲載している(doi.org/10.1101/2024.01.17.576157)。取得したオミクスデータを、PLS-ROGという多変量解析手法を用いて統合解析に供したところ、ILG特異的に変動する代謝経路およびGU特異的に変動する代謝経路を発見した。それぞれの経路の検証を現在実施しており、近日中に学術誌へ投稿予定である。
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Remarks |
我々の研究グループは、開発した様々なインフォマティクスツールをGithubウェブサイトで公開している。
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