2021 Fiscal Year Research-status Report
Circadian quartz as a protein oscillator
Project/Area Number |
21K18231
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
吉種 光 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 副参事研究員 (70569920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 拓哉 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 講師 (00452201)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 概日時計 / circadian rhythm / 生化学 / 質量分析 / 翻訳後修飾 / リン酸化 / カサノリ / クラミドモナス |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な生理現象には約24時間周期のリズム性が観察され、これは概日リズム(circadian rhythm)と呼ばれる。このリズムを駆動する分子機構は概日時計と呼ばれ、その自律振動メカニズムとして時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバック制御の重要性が提唱されてきた。しかし、これらは真の時計振動体からの機能出力リズム、つまり「時計の針」にすぎないのではないだろうか。本挑戦的研究(開拓)では、分子間相互作用・翻訳後修飾・酵素活性・立体構造変化などのタンパク質ダイナミクスが真核生物においても時計振動子(時計のクオーツ)として機能する、という予備的知見に基づき、クオーツの実体の同定と自律振動原理の理解を目指している。初年度には、様々な生物種における「概日時計クオーツ」の実体解明を目指した。まずはこれまで吉種が推進してきた哺乳類概日時計クオーツの研究をさらに追求した。具体的には、時計タンパク質のリン酸化スイッチ部位に変異を入れた際に、他の部位の修飾や相互作用因子、転写活性などに与える影響を調べるとともに、ノックアウトレスキュー実験によって時計振動における重要性を調べた。これと並行して、この実験系を他の生物種に適応し、様々な生物種における概日時計クオーツの実体を追求した。具体的にはシアノバクテリアやクラミドモナスなどの各種時計モデル生物において、主要な時計タンパク質にFlagタグをノックインした。この変異細胞から様々な時刻に時計タンパク質複合体を単離して、現在、翻訳後修飾の状態や相互作用因子などのタンパク質ダイナミクスの時刻変動を記述している。すでにいくつかの興味深い相互作用因子や新規翻訳後修飾部位を同定しており、今後、これらの機能解析を展開したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、分子間相互作用・翻訳後修飾・酵素活性・立体構造変化などのタンパク質ダイナミクスが真核生物においても時計振動子(時計のクオーツ)として機能する、という予備的知見に基づき、クオーツの実体の同定と自律振動原理の理解を目指している。初年度には計画通りの実験が遂行され順調な成果を上げている。これに加えて、哺乳類概日時計クオーツ研究において、新規相互作用因子の機能解析を展開した結果、CLIP2と名付けた因子は培養細胞において時計タンパク質との相互作用が観察され、マウス肝臓においてPER2の発現ピークより遅いタイミングで、すなわち分解に導かれるときにピークを迎えるように相互作用が観察された。このCLIP2が転写活性に与える影響を調べた結果、CLOCK-BMAL1によるE-box依存的な転写活性化が強力に抑制されることを見出した。さらにこの時、時計タンパク質の新規修飾部位に修飾が観察された。これらの知見からCLIP2は新規時計タンパク質であり、タンパク質ダイナミクス制御において重要な役割を持つと期待される。今後、CLIP2の機能ドメインの変異や基質の修飾部位の変異が与える影響を調べるとともに、CLIP2のノックアウト細胞の樹立を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
地球上で生活する多くの生物は、1日の中でダイナミックに変動する環境サイクルに適応するために概日時計(circadian clock)を獲得した。2017年ノーベル生理学・医学賞は時計遺伝子Periodの発見と概日時計を生み出す機構「時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバック制御」の提唱である。行動リズムなど時計からのアウトプットを指標にした変異体スクリーニングから次々と“時計遺伝子”が同定され、転写フィードバック制御が時計振動の本質であると考えられるに至った。しかし我々は最近、カサノリの除核実験系を再構築し、転写がない条件においても明瞭な光合成リズムを測定することに成功した(未発表)。つまり、従来の定説である「核を必要とする転写フィードバック仮説」を覆す決定的な証拠を掴んだのである。我々は、転写リズムは機能出力として時計の針の役割を担っているだけであり、細胞質に存在する未知なる時計振動子がクオーツとして機能しているという大胆な作業仮説をたて、これを検証する。 初年度には、哺乳類時計タンパク質のリン酸化スイッチ部位に変異を入れた影響を調べるとともに、時計振動における重要性を調べた。また、シアノバクテリアやクラミドモナスなどの各種時計モデル生物において、時計タンパク質複合体を単離する条件を決定した。次年度には、翻訳後修飾の状態や相互作用因子などのタンパク質ダイナミクスの時刻変動を定量的に解析する。この時に同定した新規相互作用因子や翻訳後修飾が時計振動に与える影響を調査する。また、これら相互作用リズムや翻訳後修飾リズムが生み出される分子メカニズムを追求し、生物種を超えた自律振動の共通原理を理解する。
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Causes of Carryover |
基金化された予算であるため、特に年度末に大活躍をして実験のペースを落とすことなく研究を継続することができた。ちょうどゼロにすることは難しく、次年度使用額が生じているが、すぐに使用予定であり、特に問題はない。当初の計画通りに研究を遂行し、研究消耗品を中心に使用する予定である。また、新型コロナウイルスの感染状況が改善した場合には、対面での研究打合せを頻繁に行うことにより、さらなる研究の加速が期待できる。
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Research Products
(31 results)