2021 Fiscal Year Research-status Report
リボソーム融合型ナノポア技術による1分子タンパク質網羅定量解析
Project/Area Number |
21K18232
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 想太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00447442)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | ナノポア / 1分子 / タンパク質翻訳 / リボソーム / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は無細胞翻訳系によるリボソームの翻訳とナノポアによるペプチドの解析を融合させ、リボソームから出てきた新生ペプチドが直接ナノポアを通過することによって、合成されたタンパク質の網羅解析を行う基盤技術の開発を行います。 まず、ナノポアシステムの正確な構築テストのため、膜タンパク質ナノポアではなく、すでに実績のある半導体ナノポア計測によって生体分子を1分子レベルで計測できるシステムを構築しました。窒化シリコン半導体基板をレーザーでエッチングしながら電圧を印加させることで、数nmの孔を開けることに成功しました。 次にこの孔でtRNA分子の通過計測を行い、転写後修飾なしのtRNAと修飾ありのtRNAを比較することで修飾なしのtRNAに比べて、修飾ありのtRNA構造安定性が向上した結果を得ました。また、H2Aヌクレオソームをナノポアで計測することで、DNAがヒストンから引き剥がされてナノポアを通過する様子が観察されました。さらにH2A.Bヌクレオソームバリアントと比較することで、バリアントはDNAの引き剥がされる過程が多様であることがわかりました。 このように半導体ナノポアによって核酸分子や核酸タンパク質複合体の構造安定性を計測することができるようになりました。この計測結果は新規に計測されたものであり、分子動力学シミュレーションで再現されるかを現在テストしています。 次に、膜タンパク質ナノポアの構築を進めました。液滴接触法を用いて脂質二重膜を再構成することによって、αヘモリシン膜タンパク質ナノポアを構築し、DNA分子の通過を計測することに成功しました。今後はSecYEGにおいて同様に膜タンパク質ナノポアを構築できるかを試し、さらにリボソームとの複合体形成を試し、新生ペプチドの検出へと研究開発を進めていきます。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗についてはおおむね順調です。すでに半導体ナノポアにおいてtRNAやヌクレオソーム複合体の計測結果を得ていることがその主な理由です。半導体ナノポアでの計測は本研究課題におけるリボソーム翻訳によるペプチドのナノポア解析において、膜タンパク質ナノポアでの計測がうまくいかなかったときに、トランスロコンを用いずにペプチドの計測が出来るように開発をシフトすることも可能であり、本研究においてバックアップ手法として位置づけることが可能です。 同時に、膜タンパク質ナノポアにおいても液滴接触法を応用することで再構築に成功しており、2つの種類のナノポア開発という点において順調に進んでいると自己評価することが出来ます。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は半導体ナノポアでは、さらにあらゆる生体分子の測定を進めていくと同時に、膜タンパク質ナノポアについてはトランスロコンの再構築のためにSecYEGを膜に再構成することを試みます。SecYEGが膜に再構成させることが出来た場合、さらにリボソームとの複合体形成を試し、新生ペプチドの検出へと研究開発を進めていきます。また、無細胞翻訳システムを用いてタンパク質の翻訳を行い、ナノポアで新生ペプチドが検出できるかの検討を行います。
|
Causes of Carryover |
コロナ渦の影響により、学会発表などの発表がほとんどオンラインになったため、これらの次年度使用額は主に対面での発表で生じる旅費に支出することを計画しています。
|
Research Products
(4 results)