2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模な回路精緻化の起きる新生仔大脳皮質の“現場”解明のための先導アプローチ
Project/Area Number |
21K18245
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
岩里 琢治 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (00311332)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 孝一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (50253414)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 神経科学 / 発達期可塑性 / マウス / 二光子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質の神経回路は、生後の一時期に感覚入力や自発神経活動の影響を強く受けながら精緻化され、成体の高度な脳機能を担う洗練した回路となる。特に新生仔期は大脳皮質の神経回路は大規模な精緻化が起きる重要な時期であるが、成体の脳で用いられる手法の多くは新生仔脳でそのまま使うことはできない。そうした実験手法の未整備のため、大脳皮質が精緻化される”現場“で実際に何が起きているかはほとんどわかっていない。本研究課題では、生後発達期の神経活動依存的神経回路精緻化が形態学的に明確に検出できる特長をもつマウス体性感覚野(バレル野)をモデルとしてこの課題に取り組んでいる。成体では、バレル野第4層の神経細胞は1個のバレルに向けて非対称的に樹状突起を伸ばすことにより、1本のヒゲからの入力を大脳皮質に伝える視床皮質軸索と選択的にシナプスを作っている。昨年度までの研究により、新生仔マウスのバレル野第4層神経細胞の樹状突起形態の変化を1時間ごとに8時間にわたりタイムラプスで観察することに成功していた。その手法を用いてイメージングを行い、本年度中に、樹状突起形態が9時点のすべてで明確に観察できる細胞を19個手に入れた。それらの細胞の樹状突起形態を観察時点間で比較することにより、(これまでの8時間間隔では難しかった)樹状突起ダイナミクスの正確な追跡が初めて可能となった。得られた4次元データを様々な観点から定量解析した結果、樹状突起やその枝の新生、退縮、さらに伸縮に関して、バレルの内側と外側で差がないことが明らかとなった。この結果は、バレル野第4層細胞が樹状突起や枝をバレル内側に選択的に作ったり、逆にバレル外側で選択的に樹状除去するのではなく、大規模な試行錯誤を行いながら樹状突起を精緻化することを示していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二光子顕微鏡による樹状突起形態変化のタイムラプス観察を、従来の8時間間隔ではなく1時間間隔で行うことにより時間解像度を上げることに成功した。さらに、用いる蛍光蛋白質を工夫することにより空間解像度を上げることもできた。これらの技術的な改善により、新生仔マウスのバレル野第4層細胞の樹状突起の精緻化に伴う形態変化を正確にとらえることが可能となった、その詳細な定量解析により、樹状突起精緻化メカニズムに新しい知見を加えることができた。一方、二光子顕微鏡の画像解析に当初の想定よりも時間を要したため一部の解析の進捗に遅れもあった。これらのことを総合的に評価して「おおむね順調」としたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの解析で明らかになった第4層神経細胞の樹状突起精緻化の正確なダイナミクスの情報を基盤として、特に、シナプス形成との関係に着目して、新生仔マウスのバレル野第4層における樹状突起精緻化のメカニズムを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
一部の実験・解析が当初の想定よりも時間がかかってしまったこと、および、本年度の前半は新型コロナ感染症が依然として猛威を振るっていたため遠隔地の分担研究者との共同研究がスムーズに実施できなかったことがあり、計画の一部が予定通りには進まなかった。コロナ禍はほぼ収束してきたので、今年度は研究のペースを上げられるよう努める。
|