2021 Fiscal Year Research-status Report
骨免疫系血球細胞における網羅的機能遺伝子スクリーニング
Project/Area Number |
21K18254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高柳 広 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (20334229)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | CRISPR/Cas9 / スクリーニング / 骨免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
血球細胞の分化や機能を制御する遺伝子の同定は疾患治療法の開発に極めて重要であるが、その包括的な理解には至っていない。本研究では 、CRISPR/Cas9法による遺伝子スクリーニングによって骨免疫学に関連する血球細胞の分化および機能発揮に必要な遺伝子の網羅的同定を目的とした。また、病理的条件下において特異的に誘導・活性化される細胞群について、それらの制御因子の同定を目指す 。 ①破骨細胞の単一細胞遺伝子発現解析(scRNA-seq)より、破骨細胞の分化段階ごとに発現が上昇する転写因子群を同定し、これらが破骨細胞分化を制御する可能性を検証した。候補遺伝子に対するsingle-guide RNAを設計し、CRISPR/Cas9法を用いたスクリーニングを実施した結果、破骨細胞の分化に必要と示唆される候補転写因子群が同定された。特に転写因子Aは研究報告が存在せず、欠損によって破骨細胞分化が顕著に障害された。転写因子Aについて遺伝子改変マウスを作成し、破骨細胞分化や機能制御に関する詳細な解析を進める予定である。 ②滑膜線維芽細胞(SF)におけるRANKLの発現制御機構を解明する目的でRANKL遺伝子のエンハンサー領域に着目した。in silico解析の結果、既知のRANKLエンハンサーに加え、これまでに未報告のエンハンサー領域であるE3が同定された。細胞株を用いた実験からE3領域はRANKLの遺伝子発現を正に制御することが示された。今後、遺伝子改変マウスを用いた解析によりE3領域と関節炎における骨破壊との関連を精査する必要がある。さらに、E3へ結合する転写因子の同定し、創薬シーズの発掘を見据えた研究を展開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①研究代表者は以前、世界に先駆けてin vitroで分化誘導した破骨細胞を用いてscRNA-seqを実施し、詳細な遺伝子発現プロファイルを樹立した(Tsukasaki et al, Nat Metab. 2020)。scRNA-seqデータに基づき破骨細胞の分化段階ごとに発現が上昇する転写因子群を同定した。これらの転写因子群はいずれも破骨細胞における役割は不明であることからCRISPR/Cas9法によって当該転写因子を欠損する破骨細胞前駆細胞をin vitroで樹立し、破骨細胞分化への影響を解析した。スクリーニングの結果、破骨細胞の分化誘導に必要と考えられる6つの転写因子が同定された。その中でも転写因子Aはこれまでに研究報告のない未知の転写因子である。よって、今後は転写因子Aに主軸を置き、生体内おける役割の解明を目指す。 ②近年、線維芽細胞は疾患と深く結びついていることが明らかにされ、治療標的としての価値が見出されている。関節炎においてSFが産生するRANKLは関節局所の破骨細胞分化を強力に誘導し、骨破壊を引き起こす主因である。しかし、SFにおけるRANKLの発現制御機構は不明な点が多い。そこで、研究代表者はCRISPR/Cas9 スクリーニング系を非コードゲノム領域に適応し、SFにおけるRANKLの発現を制御するエンハンサー領域を探索した。in silico解析からRANKLの発現を制御しうる5つのエンハンサー領域(E1からE5)が同定された。レポーターアッセイの結果、E3領域がSFにおけるRANKLの発現誘導を制御するエンハンサーであることが示唆された。E3領域はこれまでに報告例のないRANKL制御領域の候補であり、E3欠損マウスを用いて、骨破壊との関連性を精査する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスを作成・解析することで、本スクリーニングによって得られた成果をより大きく発展させる。以下の点を重点的に実施する。 ①転写因子Aの破骨細胞における役割を解析するためのツールを整備する必要がある。まず、転写因子Aを全身性に欠損するマウスをCRISPR/Cas9法により作成し、胎仔肝細胞から破骨細胞を分化誘導し、スクリーニング結果の妥当性を検証する。転写因子Aをタンパク質レベルで検出するためにFLAG-tagを導入したノックイン(KI)マウスを作成する。本マウスを用いて転写因子Aと相互作用するタンパク質の同定やゲノム上の結合領域の決定を目指す。さらに、転写因子Aを破骨細胞特異的に欠損するマウスを作成するために、loxP配列を挿入した転写因子A floxマウスを作成する。破骨細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスと交配し、転写因子Aの役割を生体内で検証する。すでに、FALG-KIやfloxマウスの作成を進めており、目的の個体を単離する段階にある。 ②RANKLエンハンサーについては、CRISPR/Cas9法を駆使することで、数キロbpにも及ぶE1、E2、E3領域を個別に欠損するマウスを作成した。これらのマウスを用いて、SFにおけるRANKL発現を解析するとともに、E3領域の欠損によって生じる関節炎誘導性骨破壊の動体変化を定量的に生体レベルで検証する。また、配列情報からE3領域に結合する転写因子の同定を目指す。E3領域に結合する転写因子を欠損するマウスを作成し、種々の関節炎モデルを実施することで骨破壊との関連を検証する。
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Research Products
(35 results)
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[Journal Article] Cytokine profile in patients with chronic non-bacterial osteomyelitis, juvenile idiopathic arthritis, and insulin-dependent diabetes mellitus.2021
Author(s)
Kostik MM, Makhova MA, Maletin AS, Magomedova SM, Sorokina LS, Tsukasaki M, Okamoto K, Takayanagi H, Vasiliev DS, Kozlova DI, Mushkin AY.
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Journal Title
Cytokine
Volume: 143
Pages: 155521
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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