2021 Fiscal Year Research-status Report
生体信号の非接触パターン計測を実現する電磁反射位相検出アレイの確立
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21K18307
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門内 靖明 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90726770)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / レーダー / 生体信号 |
Outline of Annual Research Achievements |
テラヘルツ波の周波数掃引およびデータ取得・処理をリアルタイムに行うシステムを構築した。一般に、レーダー計測においては反射信号位相のフレーム間差分を算出することで、対象物の位置や反射率などの微小変化を検出することができるが、このときに現れるトレードオフについて実験的に考察した。測定間隔を短くするほど同一時間内に生じる変位も小さくなるため、より細かな変位を検出できるようになる一方で、差分値の小さい信号はノイズに埋もれやすくなる。このように、変位の速度と測定の間隔にはノイズレベルによって定められるトレードオフが存在することを実験的に確かめた。測定データを複数のスレッドに分割して処理するための並列プログラムを作成し、リアルタイムに様々な解析および可視化を行えるようにした。構築されたシステムを用いて身体表面の様々な部位からの反射信号を観測したところ、体動によって生じる体表変位が顕著に観測されることを確認した。今後は、体内の情報を反映した位相変化の取得に向けて、信号変化を多点並列的にパターン計測することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ波の周波数掃引およびデータ取得・処理をリアルタイムに行うシステムを構築したことで、実際に位相差を検出できるようになった。システムの動作速度はAD変換速度および周波数掃引速度に依存し、現在は後者がボトルネックとなっているものの、1ms程度の間隔での測定を行うことができる。また、次年度に取り組むパターン計測に向けて、中空導体平板間を多重反射伝搬するモードに着目して2次元ビームを形成する構造を設計・試作し、ベクトルネットワークアナライザを用いた実測によりその動作を確認した。また、ポリマーフィルム上に成膜された銅をパターニングすることで表面インピーダンスを人工的に調整した表面を作成できるようにした。このように、次年度の研究で使用する原理・構造に関する準備が整えられたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は反射位相をパターン計測可能なセンサアレイを構築する。そのためにまず、導体板間に構成される導波構造中において実効屈折率分布に基づくレンズを実装し、入力ポートから励振される波を2次元ビームに変換する構造を実現する。そして、高効率かつ広帯域な動作が可能になるよう構造を最適化し、反射波と参照波との非線形検波を行って位相をパターン計測できるようにする。また、使用する周波数についても検討を重ね、透過性の高さと分解能の高さの間に生じるトレードオフを考慮して本提案に最適な電磁波の周波数を用いる。上記により作製されたセンサを用いて、例えば身体動作の推定や健康状態のモニタリングなどのアプリケーションの原理実証を試みる。
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