2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18312
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 誠一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (70315125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60325529)
加葉田 雄太朗 長崎大学, 情報データ科学部, 助教 (40830097)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 多目的最適化 / 特異点論 / 医療データ / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も,異分野チームとして構成された担当者間でディスカッションを何度も継続してきた.その一部は,画像の認識・理解シンポジウムにおいて発表済み(タイトル:多目的最適化問題の一意解のための特異点論応用)である.単なる応用研究と異なり,むしろ数学に近い分野の研究が基盤として存在するため論文を多発するのは難しいが,それでも着実に理論的成果は出ている.上記シンポジウムの段階では,複数の二次関数を目的関数とした場合の多目的最適化問題において,そのパレートフロント(パレート解集合)の形状を吟味し,複数の着眼点での特異点を見出すことに成功した.二次関数は,正規分布の対数尤度や,最小二乗系,機械学習における正則化など,実問題で頻繁に用いられる典型的な目的関数である.それらを複数の目的関数としたときに,一般的な荷重和による単一目的化ではなく,多目的のまま扱いながらパレートフロントの曲率最小点の意味での一意解の導出とその意味を見出したのは,成果の一つである.その後も度々対面でのディスカッションも行ってきた.2022年度末時点では,二次関数の代わりに正規分布形状を目的関数に用いた場合について議論を行った.二次関数の場合のパレートフロント形状が比較的安定しているのに比べ,複数の正規分布を用いた場合のパレートフロントは正規分布間の位置関係によって大きく変化し,それによって特異点位置も異なる.例えば,2つの正規分布について,それらの平均間距離を徐々に広げると,特異点位置の軌跡は一種の分岐構造を描くことがわかった.すなわち特異点を頼りに求めた唯一解の様相は状況によって大きく異なるという興味深い成果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,理論研究内容については予想以上の広がりが起きており,多目的問題で多用される二次関数や正規分布を用いてパレートフロントの特異点(曲率最小点や速度最大・最小点)について,その性質を数学的に扱う枠組みができている.特に正規分布については,(当初意図していた情報学における応用に加え)数学的な価値のある成果も生まれつつあり,今後に期待している.医療データのほうも収集が進んでいる.ただし,具体的に特定の医療データに基づいての多目的最適化については未着手である.以上の点を考慮し,「おおむね順調」の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究については,引き続き正規分布を中心に,そのパラメータ(分散,平均,次元数)がパレートフロント特異点に与える影響等について,理論的な検討を重ねる.また実問題応用については,複数のトイプロブレムにおいて具体的な一意解を求める検証を行う.そして最終年度にふさわしい集大成として,医療データに関する多目的最適化問題を具体的に設定し,その一意解を求めたうえで,一意解の医療問題における意義を吟味する.
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Causes of Carryover |
繰り越し理由は以下の二つである.第一は,実施報告の項目に書いたように,本年度は主として理論研究を推進して,それに関する成果を得た.2023年度に実データ実験を行うが,そのための計算機購入経費は,なるべく最新機種が望ましいことを考えて,来年度に繰り越すこととした.第二は,旅費の高騰である.最終年度の学会発表出張の増加を見込んで,経費の一部を次年度分の旅費として繰り越すこととした.
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Research Products
(10 results)