2021 Fiscal Year Research-status Report
新規超分子医薬品によるオートファジー制御と悪性腫瘍治療法の開発
Project/Area Number |
21K18322
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三浦 裕 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40557980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 誠 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (40572376)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 高分子 / ナノテクノロジー / 超分子 / がん / ロタキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、精密高分子合成とナノテクノロジーを巧みに用いることにより、世界ではじめて全身投与によって部位特異的にオートファジーを制御(on/off)し、腫瘍を縮小あるいはがんの進行を抑制させることが可能な注射剤の開発を行っている。具体的には(1)環状構造を有する疎水性低分子薬剤・ラパマイシンやバフィロマイシンなどの分子内にあるオングストロームサイズの空間空隙を生体適合性高分子化合物で縫い合わせて水溶化させる技術を確立し、この技術によってポリロタキサン様の構造を有する新規水溶性超分子医薬品を開発している。さらに(2)これらの新規薬剤の全身投与によって、頭頸部がんや脳腫瘍などの悪性腫瘍に対する革新的な治療法の提供を目指している。初年度は、直鎖状高分子であるポリエチレングリコール(PEG)と環状分子であるラパマイシンの分子縫合、すなわち超分子形成について詳細に検討した。PEGの分子量と末端官能基、ならびに反応溶媒の極性を変化させながら、PEGとラパマイシンの反応を核磁気共鳴スペクトル(1H NMRならびに2D-NMR)、円偏光二色性(CD)、およびゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて追跡することにより、擬ロタキサンを形成する最適な反応条件を見出した。また、ローダミンをキャッピング分子として選択することで、生成したロタキサンを単離することにも成功している。さらに、頭頸部がん細胞(HSC-2)を用いて細胞シグナリングを調査した結果、擬ロタキサン、ロタキサンの両方においてオートファゴソームとLC3Bの増加が確認された。このように本年度は、本研究の分子設計の妥当性とin vitroレベルでの薬理効果が示されており、当初計画通りに研究が進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画では、初年度においては主に高分子の合成と超分子の形成など合成創薬関連の研究を行うこととなっていた。しかし、合成条件の最適化などの作業が予想以上に順調に終了し、細胞シグナリングや一部の薬理効果の確認など当初の予定を上回るスピードで研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度に得られたロタキサン分子を用いて、さらにin vitroでの実験を中心に研究を進める。具体的には、共焦点顕微鏡を用いた細胞内動態やウエスタンブロッティングなどを用いたタンパクレベルでの細胞内シグナリングに関して詳細に調査する
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