2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞メカノ活性化効果を最適化する非一様力学場培養技術の開発
Project/Area Number |
21K18326
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木戸秋 悟 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (10336018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保木 タッサニーヤー 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (20526834)
江端 宏之 九州大学, 理学研究院, 助教 (90723213)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞メカノ活性化 / 非一様力学場 / 細胞内部応力ゆらぎ / メカノバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、非一様力学場環境中を運動する細胞において顕現する、細胞の生存・増殖・運動性などの諸機能の増強現象に着目し、その系統的操作技術を開発し細胞操作工学の新たな基材設計分野を開拓することを目的とする。研究代表者は最近独自に、非一様力学場を非定住に運動する細胞では内部応力ゆらぎが増幅する結果として、細胞の健常活動に関与する遺伝子群の発現が広範に活性化されることを見出した。『非一様力学場上での細胞の自発的運動自体が細胞内部応力の非平衡度の増大とともに細胞をより健常化し、その機能強化に寄与する(メカノ活性化効果)』。本研究ではこの現象の系統的制御、原理解明、および主に間葉系幹細胞(MSC)の治療有効性増強を踏まえた実用展開の開拓に取り組む。 初年度は、細胞メカノ活性化効果を最大化する非一様弾性場の系統的設計を検討した。これまでにMSCの治療効果に関連した遺伝子群の活性化が六角超格子硬軟パターンニングゲル上での培養条件下で確認されている一方、この応答は比較的マイルドなものであった(最大亢進遺伝子APCで4倍の発現上昇)。今年度は、さらに強い活性化を引き出す非一様弾性場基材の設計条件を見出すため、独自の弾性パターニンゲル作製技術を応用して、非一様力学場のパターンを様々に系統的に設計し、MSCのメカノ活性化効果を最大化する基材条件を探索した。基材弾性場のパターンのスクリーニングとして、細胞の運動性、接着形態の動的変動、および幹細胞性マーカーの確認に絞って細胞評価を行い、細胞機能活性化に特徴的な運動速度上昇、形態ゆらぎ増大、幹細胞マーカーの発現亢進をもって候補パターンの絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MSCのメカノ活性化度の増強のための非一様弾性場の形状要因として、パターンの辺長、頂点数、硬軟領域の面積比に着目し、これらの値が従来の三角形パターンより高くなる新規パターンの設計を検討した。特にシンプルな四角パターンの辺長とパターン間距離を変数として探索を行った。新規パターンである四角形パターンにはMSCの細胞サイズやパターニングゲルの弾性率分布およびDurotaxis、逆Durotaxisが起きる頻度を考慮した上で、上記変数の最適化を検討したところ、パターンの四角形1辺が85μm、パターン間の幅が60μmの場合に逆Durotaxisが増え、総合的に硬軟領域間の非定住運動が最大活発化することが予想された。最適と判定されたパターン条件に対して、光リゾグラフィー装置を用いて弾性パターニングゲルの作製を行った。硬領域が20kPa程度、軟領域が2kPa程度になるように作製した四角形およびコントロールの三角形パターニングゲルにMSCを播種し20時間タイムラプス撮影を行った。その結果三角形パターニングゲルよりも四角形パターニングゲル上においてMSCは硬領域と軟領域間の横断が活発になることが確認された。またこの非定住運動に伴う細胞形態のゆらぎ増幅も確認され、MSCのメカノ活性化を誘導する弾性パターニング場の条件を満たしていることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は当初計画のとおり、メカノ活性化を最大化し得る非一様弾性場の探索を行い、従来の硬領域三角形パターニングゲルに比して、硬軟領域間の非定住頻度の高まる硬領域四角形パターニングゲル形状の最適設計条件を決定した。この培養過程において、細胞形態のゆらぎ(面積変動)の計測をまず行ったが、細胞メカノ活性化に対する本質的な駆動力は、細胞内部応力のゆらぎの増強であることがこれまでの予備検討から見出されている。さらにメカノ活性化を評価するマーカーとしてAPC遺伝子発現を定量する必要があるが、初年度は十分な基材数を作製し切れずAPC発現解析は予備測定の段階にとどまっている。これらの課題は当初計画のとおり第二年度にかけて進える予定である。内部応力ゆらぎの定量は、非一様力学場での牽引力顕微鏡解析を行い、APC発現評価はキャピラリー電気泳動を用いた少量タンパク質発現解析を活用して順次推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大のため予定していた旅費を使用することができなかったこと、および実験消耗品等の購入にあたってより安価な製品を選択して購入したところ若干の節約が可能となったため。
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Research Products
(8 results)