2021 Fiscal Year Research-status Report
Analyze and Archive of Handwriting Movement Focusing on Masterpieces of Calligraphy
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21K18329
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
尾川 明穂 筑波大学, 芸術系, 准教授 (20630908)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 書字運動 / 手指構造 / 運動解析 / 字径 / 大字 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、手指を中心とする書字運動の解析により、一世代のみしか現れないような優れた書芸術が身体構造に起因する手指運動の制限で生じたことを明らかにするものである。従来の学習法である古典書跡の拡大臨模(まねて書いたり敷き写すこと)では習得困難な部分に注目することで、書の教育・歴史の研究に繋げるとともに、運動解析の結果をアーカイブ化することで、書以外の芸術における身体技能の解明に資することを目指している。 本年はコロナ禍により、協力者による運動解析を見送ったため、海外の関連論文の調査に取り組んだ。そのうち、「無心筆への移行」「字径の拡大」「懸腕法の普及」の3つが中国宋代の書法に大きな展開をもたらしたことを指摘した、何炎泉「北宋毛筆発展与書法尺寸的関係」(孫暁雲・薛竜春主編『請循其本―古代書法創作研究国際学術討論会論文集』南京大学出版社、2010)を翻訳し、拙訳「何炎泉「北宋期における毛筆発展と書法の大きさの関係」(『書芸術研究』第15号、2022)として公開した。また、この翻訳に関して、口頭発表「何炎泉氏「北宋毛筆発展与書法尺寸的関係」を読んで」(書芸術研究会例会、2021)を行った。 宋代書論においては、「大字」への言及が多いほか、南朝の大字書跡「エイ鶴銘」への注目や、大字をいかに書くべきかという議論も確認できることから、何氏の見解は容易に首肯される。装置を用いた解析方法の考察においては、何氏が指摘したような比較的大きな書法の変化は扱わず、もっと微細な変化を扱うことに意義があろうことを確認した。そのため、基本となる大きな仮説を2点に絞り、具体的な実験手順を設定し、勤務先にて研究倫理審査申請を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年はコロナ禍により、協力者による運動解析を見送ったため、遅れが出ている。ただし、これまでの文献や作例による研究の成果を見極めることができ、実験計画の見直しに繋げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症流行の状況を確認しつつ、実験手順の簡素化を図るなど感染対策を行い、運動解析と考察を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度中に実験協力者による運動解析を行う予定であったが、次年度以降に行うこととしたため謝金を中心に未使用額が生じた。 このため、次年度以降の運動解析において謝金に充当することにしたい。
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Research Products
(2 results)