2023 Fiscal Year Research-status Report
黒とその倫理の研究――ラ・トゥール(1640)からBLM(2020)まで
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21K18330
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
加藤 有希子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20609151)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 黒 / 毒 / 忘却 / 中動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は「黒」という色が含み持つ「罪」「しがらみ」「妬み」「嫉み」「ネガティブな感情」といったものに焦点を当て、そこからどのように抜け出すべきかの倫理的な考察を行った。一つ目の成果は単著『オーバーラップ』(水声社2023)に同時掲載した「ブラックホールさんの今日この日」という短編物語で、恨みや復讐心などをもった存在がどのように、その憎しみの連鎖の鎖を断ち切るかをテーマにした文章である。この物語の中では、「忘却」という営みを主題にした。また二つ目の成果は、アメリカの20世紀のアーティスト、ジャクソン・ポロックが1951年から53年にかけて描いた「黒い絵」についての考察である。ここでも、ポロックの創作における焦りや憤りといったものが、どのように表現され、そしてどのようにその呪縛から抜け出すべきなのかを考察した。ここでは自意識を背負うモダニストの限界と、中動態による新しい打開策を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したよりも、倫理的な考察に偏っているものの、2023年度も2つの研究成果を上げることができ、順調に推移している。現在は「漆黒・桎梏」というまさに黒をテーマにした、創作的な物語を執筆中であり、その出版を最終年度の成果としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、現在、『漆黒・桎梏』という、黒と性の呪縛について深く考察した創作的な物語の出版を準備している。この作品は、すでに水声社で企画会議を通っており、準備ができ次第出版の予定である。この出版をもって、本科研の最終年度の成果としたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は予算が予定していたよりかからず、次年度に『漆黒・桎梏』の出版を予定しているため、「黒」についての研究をもう一年度延長することにした。2024年度の予算は、2023年度に使わなかった分を、使用する予定である。
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