2021 Fiscal Year Research-status Report
疑偽経典の受容・作成・浸透から見た日本仏教の歴史と思想に関する研究
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21K18338
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 一彦 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 特任教授 (40230726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 憲良 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 研究員 (30788807)
藤本 誠 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (60779669)
高志 緑 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD) (80792720)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 偽経 / 疑経 / 文化交流 / 文化変容 / 民衆宗教 / 仏教史 / 東洋・日本思想史 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、疑偽経典の受容、作成、浸透と、そこから見た日本仏教の歴史と思想の特質について、基礎的な研究を進め、共同研究の構成員間で理解を共有することができた。 本年度は、研究打ち合わせ会を1回、研究会を2回、開催した。研究打ち合わせ会では、この研究課題の意義と可能性、および研究の方法などについて議論を深め、具体的な論点、課題を析出することができた。研究会(疑偽経典研究会)は、第1回を10月16日にZoomによるオンライン形式で開催し、蓑輪顕量「日本撰述の疑偽経典をめぐって」の研究発表と討論を実施した。これにより、中国撰述の疑偽経典ばかりでなく、日本撰述の疑偽経典について、多くの知見を得ることができた。第2回は、12月18日に、名古屋市立大学にて、田林啓「中国の神異僧像をめぐって」の研究発表と討論を実施した。こちらは対面形式で開催することができ、討論において対面の研究会を活かした踏み込んだ意見交換を行ない、特に美術史研究と文献による宗教・思想研究の連携、総合化について多くの知見を得ることができた。 国内調査では、盂蘭盆経説相図、地蔵菩薩立像で知られる三重県松阪市の朝田寺、および「七寺一切経」で知られる愛知県名古屋市の七寺の調査を実施する計画で、調査先の寺院と日程調整を進めたが、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、日程を延期にすることとし、次年度に調査を実施する予定とした。なお、調査の前提となる事前研究を行ない、認識を深めることができた。 また、研究打ち合わせ会において、美術史部門の研究分担者の拡充が必要であるとの提起により、種々議論の結果、次年度より1名の研究分担者(美術史専攻)に追加でご参加いただくこととし、当該研究者に依頼をし、快諾を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
打ち合わせ会および研究会を順調に実施することができ、打ち合わせ会においては、メール会議をも活用して、研究チーム全体で調査、研究の準備・進展状況について確認し、調査の計画および次年度以降の研究計画や、研究会の講師の候補者選定、研究チーム構成のあり方、研究成果の発信などについて意見交換し、認識を共有することができた。 研究会では、2本の研究発表とそれに基づく長時間の討論を実施し、多くの知見を得ることができた。討論では、人文学の複数の分野の研究者から貴重なご意見をいただくことができ、この研究テーマが分野横断的な研究課題であることをあらためて認識するとともに、この研究テーマが有する豊かな可能性を再確認することができた。 ただし、国内の実地調査、史料調査については、新型コロナウィルス感染症の蔓延によって、年度内の日程が変更を余儀なくされ、次年度に延期にすることとした。その分、その時間を調査先として予定していた寺院の所蔵史料に関する事前研究にあてるなど、デスクワークを進展させ、予備的知見を充実させることができた。これにより、研究は「おおむね順調に進展している」とした。これらの成果により、次年度は、複数の調査を進めることができる準備態勢が整ったと考えている。また、研究会での意見交換の成果を承けて、また実地調査・史料調査に備えて、美術史分野の研究分担者を一名追加で依頼することとし、快諾を得ることができた。これにより、共同研究チームを強化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策であるが、2022年度の研究計画に関しては、新型コロナウイルス感染症の流行状況に応じた、柔軟な対応および計画変更が必要であると考えている。まず、研究打ち合わせ会については、Zoomを用いたオンラインの開催を主とすることとし、研究会(疑偽経典研究会)については、討論における議論の深化という観点からすると対面開催に利があるが、しかし感染状況を勘案しながら、対面・オンラインの併用によって対応することとする。 次に、国内の現地調査・史料調査については、本年度に予定していた調査が次年度に延期になっており、あわせてもともと次年度に予定していた現地調査・史料調査がある。したがって、やや分量の多い調査を実施しなければならないが、調査先とよく相談し、また感染状況を勘案して、できる限り効率的で集中的な調査を実施するように対応したい。 次に、当初予定していた海外調査(中国西安市)については、現在の現地の感染状況、および外国人の入国制限から判断して、予定通りの実施は困難と判断している。次々年度に延期したとして、それが可能になるかどうかは、さらに状況の推移を観察しなければ不明であるが、延期とするか変更とするかを含めて、研究打ち合わせ会で意見交換、そして意見の集約をして、調査、研究計画を再構築したいと考えている。 また、それに応じて、国内外への研究成果の発信方法についても、状況の推移を見据えながら、事態に柔軟に対応し、研究計画を再構築していく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画では、当初は、国内の現地調査・史料調査を実施するよていであり、調査先の寺院と日程調整等を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、調査日程を変更、延期とすることになった。調査は次年度に実施することとした。これにより、調査費用等で次年度使用額が発生することとなった。
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Research Products
(9 results)