2022 Fiscal Year Research-status Report
A research survey of more than human culture in East Asia and its connection to design theory
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21K18344
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ソン ヨンア 法政大学, デザイン工学部, 准教授 (20831423)
城 一裕 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (80558122)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | speculative ethics / more-than-human / ACI / 発酵 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近年,特に欧米を中心として活発になっている脱人間中心主義の議論のなかで扱われる「モアザンヒューマン」、つまり人間以外の自然存在を「人間 以上の存在」と捉え、人間と自然の対称性を回復するために用いられる概念を、アジア各地の発酵食品産業における自然観,宗教的価値観,そして文化背景と接 続した上で,情報技術の設計に応用するフレームを確立することを目的とする。そのための方法として,初年度より日本、韓国、台湾といった東アジア諸地域において発酵食品の生産や農業,その他の関連する文化活動に携わる人々のもとで現地調査を行い,東アジア地域に共通もしくは相違するモアザンヒューマン概念の発達を探る計画を立てた. 前年度において新型コロナウィルス・パンデミックの影響で実施できなかった国内外の調査活動を再開することができた。その結果、韓国と台湾と日本国内の発酵食文化の共通点と相違点を発見し、発酵食作りのプロセスに内在する文化的価値観や、そこに携わる人々の身体感覚についての証言を収集することができた。また、前年度に監訳した「メタファーとしての発酵」を基にしたワークショップやオンライン参加型トークイベントを実施し、デザイン・コンセプトとしての発酵概念の有用性を確認、検証することができた。同時に、研究チーム内でいくつかの発酵概念に着想を得たインタラクションのアイデアを提出し、その可能性についての議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度において、本研究課題の当初の目標であった韓国および台湾の訪問と有識者インタビューを実行することができた。2022年9月には、Social Fermentationを標榜するアーティストグループ Rice Brewing Sisters Clubに、韓国の釜山ビエンナーレ2022での新作展示会場で会うことができ、作品制作の説明を受けた後に意見交換を行った。その後、彼女たちの勧めで、釜山の伝統的なマッコリ麹造りの工房を尋ね、現地に固有の黄色麹カビを生やす製法を体験させてもらい、話を聞くことができた。今後、さらなるインタビューを通して韓国固有の発酵文化の知見を収集するための関係構築を行うことができた。2023年3月には台湾・台北の食物研究図書館Beherを主宰する謝碧鶴氏を訪ね、台湾の発酵食品に関するインタビューを行った。また、国立台湾大学のD SchoolのDeanを務めるChen Bing-Yu教授らを訪ね、社会学的アプローチで現地の発酵食を研究するアプローチについて学ぶことができた。あわせて、生物学的データを採集する携帯型プローブ(センサー電子回路系)のプロトタイプを作成し、現地を移動しながら様々な発酵食のph/ORP/温度などを収集する体験を行った他にも、発酵概念に着想を得たデバイスのアイデアを研究チーム内で議論することができた。 以上の調査と並行して、2022年11月に東京ミッドタウンのデザインハブにおいて、メタファーとしての発酵をテーマにしたデザインワークショップを開催した。社会人と学生が13名参加し、それぞれがデザイン対象を決定した後にディスカッションを通して他者のコメントを集め、それを張り合わせたシートを発酵器に見立てて日常生活のなかに配置し、徐々に思考を深めていくというアプローチを検証し、最終日に発表を行ってもらった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度においては、前年度で関係構築ができた韓国と台湾の有識者・専門家たちと引き続き交流を行い、さらに国内の発酵食関係の専門家へのアプローチを続ける予定である。また、現時点までに集めた「メタファーとしての発酵」に関する知見をまとめて論文執筆を行う。そして前年度に行ったメタファーとしての発酵デザインワークショップの2回めを実施し、さらにデザイン手法としての発酵概念の精緻化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策の影響で国内外の調査が予定した通りに全て実施できなかったため。
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Remarks |
(1) 2022年11月に開催した「メタファーとしての発酵」デザインワークショップ。
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Research Products
(1 results)