2021 Fiscal Year Research-status Report
Creation of cultural arts and sophistication of expression in super-aging villages
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21K18354
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
三村 豊 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 研究員 (90726043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石山 俊 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, プロジェクト研究員 (10508865)
市川 昌広 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80390706)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 超高齢化 / 文化芸術 / 表現の高度化 / 超学際的アプローチ / 文化資源 / アンケート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超高齢化する集落での記憶の継承とinclusive wellness(みんながよいこと)を考慮した文化芸術の価値創出に向けてその手法論を明らかにする。2021年度は新型コロナウイルス感染症対策により現地視察が困難であったため、フィールド視察の代替案としてアンケート調査の実施およびその分析を行った。 アンケート調査では、集落内にルーツを持つ他出した血縁者を対象に実施した。アンケートの質問は、年齢や性別、家族、収入源などの基本的な情報に加え、屋号の認知度や集落への里帰り状況、未来の集落のあり方を探る指標を項目として挙げた。分析ではコンジョイント分析を用いて環境サービスにおける集落改善の状況を評価した。アンケートの配布数は112件、回収数は50件(回収率44.6%)であった。 コンジョイント分析では、回答者50名のうち32名の総合評価の結果が、「集落人口の動向」がもっとも重要度が高く、続いて「生活の質の向上」、「購買や移動事項」、「生活生産条件」の順であった。また、水準別で見ると、「集落人口の動向」では、「130人(1.5倍増加)」、「生活生産条件」では、「農業生産条件改善」、「購買や移動事項」では、「移動スーパーの訪問」、「生活の質の向上」では「福祉・医療関係の巡回サービス」において重要度が高い結果となった。とくに40代、50代の回答者では、生活の質の向上として「生活相談(カウンセリング)」の重要度が高い結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究計画では、主に「超学際的アプローチによるキャパシティ・ビルディング」の構築および地域のための文化芸術の概念化の研究を行った。 研究分担者の市川は、これまでの研究活動をまとめるため、地域住民から地域の課題や取り組みをインタビューして、それらを映像としてまとめた。また、新たな取り組みでは超学際的アプローチにおけるステークホルダーの拡大として企業との連携を強化した。 分担研究者の石山は、文化芸術の概念化の整理のため民芸と工芸に着目し、とりわけ漆芸の現地視察を行う。漆芸が学べる日本の公的機関は、石川県の輪島(石川県立輪島漆芸技術研修所)と香川県の高松(香川県漆芸研究所)にある。2021年度は香川県漆芸研究所を視察し、「蒟醤」、「存清」、「彫漆」などの技法について聞き取り調査を実施した。また、研究所に在籍する学生に焦点を当てて、漆芸の技法がどのようにして継承や発展に寄与するのか、その意義についてまとめる予定である。他方、新たな試みとして、「食は創造的な営みである」と仮定し、綾部市のそば職人(Iターン者)に着目し、聞き取りインタビューを実施した。文化芸術がもたらす地域への恩恵は、人々の生活に根付かせることも重要であり、こうしたインタビューを継続的に実施して、本計画の文化芸術の概念化としたい。 2021年度はコロナ禍の制約がある中、さまざまなステークホルダーとの関係構築に勤めた。次年度も引き続き、実践的な研究活動を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、文化芸術の創出と成果発信、その効果の計測を並行して研究活動を行う。そのため、研究代表者と分担者がそれぞれ異なる研究活動を実施すると同時に、研究成果である知識の共有を常に意識して研究活動を実施しなければならない。2021年度はオンラインミーティングでの議論となってしまったため、2022年度は対面での研究会を通じて研究テーマや課題の意思疎通を重視したい。そのため、年度はじめの早い時期に本研究が主とするフィールド(高知県大豊町)を訪問し、申請段階で予定していなかった企業との連携や文化芸術の異なる視点など共有する。また、アンケート調査の結果は、学会発表を通じて広く紹介し、今後の研究活動に活かす予定である。 フィールドワークでは、地域アートに結びつく地域資源の掘り起こしと地域資源活用アーティストの生成過程の方法論、踊り・ダンスなどを通じて、どのように山村の住民を元気にさせるか、その実践研究を実施する予定である。また、集落内のアンケート調査を実施して、定住者と関係人口(集落内にルーツがある者を対象)の価値観調査の報告書をまとめる。 2022年度以降の推進方策として、地域アートを協働するアーティストとの情報共有を進める。地域アートやアートプロジェクトでは、研究者とアーティストといった専門分野の垣根をなくすことが重要である。そのため、参加予定のアーティストには研究活動であるフィールドワークや集落調査に参加してもらい、調査段階から議論して地域アートにおける文化芸術の共通の目標を構築する。
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Causes of Carryover |
2021年度は、超学際的アプローチによるキャパシティ・ビルディングの構築のため、国内出張および参加するアーティストへの謝金を予定していたが、科研の採択通知が届く前に、新型コロナウイルス感染症の状況を考慮してアンケート調査の分析と報告書の整理することに変更した。 2021年度は、定期的なオンラインミーティングを実施し、当初予定とは異なる研究活動で実施した。しかしながら、オンラインでのミーティングは、話し合うことができても、業務的な議論となってしまい、余白がある(気軽な)ディスカッションにはなりにくいことがわかった。次年度は対面での交流を深め、研究活動を実施する。そのため主な使用計画としては、国内出張に使用する。また、当初予定していたアーティスト(京都)に加え、更なる連携を図るため別のアーティスト(高知・東京)との作品づくりの謝金等に充てる。
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