2022 Fiscal Year Research-status Report
The process and mechanism of the growth of Taiwanese and Hong Kong Cantonese as new written languages
Project/Area Number |
21K18357
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 雅之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30313159)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 書記言語論 / ダイグロシア / 現代文学 / 文体 / 書面粤語(書面広東語) / 書面台湾語 |
Outline of Annual Research Achievements |
粤語(即ち広東語)とビン南語は、共に漢語派諸言語に属する言語であるが、本來はその他の地域言語と同様に音声言語として存在していた。しかし、近現代に於いて文字で記される機会が漸増し、現在では粤語は香港で、ビン南語は台湾で、それぞれ(媒体や頻度の差こそ有れ)書記言語としても機能するに至っている。本研究では、この書記言語化──文字という視覚的な形を得て(排他的に当該言語であると)認知されるようになる──という現象のメカニズムを考察しており、今年度は書記言語化の定義と関連諸現象の範囲を明確化することに力を入れた。その成果の一部分は、国際シンポジウムで行った口頭発表「關於粤語書寫歴史分期的構想」(粤語書記言語化の時代区分についての構想)の中で言及した。 また、1938年から2012年までの約75年間に日本国内で刊行された粤語教材約60点を基礎資料として、粤語に特徴的な語彙がどのように文字表記されてきたかを調査し、その調査結果の一部分を論文中で示した。そこで得られた主要な知見は次のとおりである。(1)全ての教材で同一の字体で表記された語は少数であるが、しかし字体が未統一の語もバリアントは少数に限られていたこと、(2)20世紀前半には字体が未統一であった語も、1980年代以降は統一へと向かう傾向が見られること、(3)特徴的な語彙の字体の組み合わせによっては、時期を特定することができる場合が有ること。 尚、書記言語化について得られた知見の一部は、学部の授業で受講者と共有することで、大学教育に活かした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
香港粤語に関する研究は順調に進めることができており、一次資料についても文学作品の収集は概ね実現できた。台湾ビン南語(狭義の台湾語)の一次資料については、近年の文学作品を充分に収集できた状態に至っていないが、COVID-19流行以前に入手した作品を使って分析を行うことで研究に遅延が生じないよう対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2023年度は、台湾ビン南語の文字データ化を進め、分析・考察する対象を台湾ビン南語(狭義の台湾語)に移す。そして、書記言語化という現象を客観的に把握するための枠組みを明示した上で、香港粤語と台湾ビン南語の書記言語化のプロセスを比較し、両者の相異点を明らかにする。
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