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2023 Fiscal Year Research-status Report

深層学習を用いた画像診断による玉類の産地同定の簡易化研究

Research Project

Project/Area Number 21K18378
Research InstitutionSaitama University

Principal Investigator

中村 大介  埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (40403480)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 田村 朋美  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (10570129)
正司 哲朗  奈良大学, 社会学部, 教授 (20423048)
飯塚 義之  金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員研究員 (90804203)
Project Period (FY) 2021-07-09 – 2025-03-31
Keywords深層学習 / ガラス / 石製玉類 / 日本 / 韓国 / モンゴル
Outline of Annual Research Achievements

2023年度は、これまで収集したヒスイの岩石学的分析を分担者の飯塚義之氏に依頼し、その内容を整理した。代表者らが行っていた蛍光X線分析においても日本で産出するヒスイにはナトリウム(Na)が含まれてない一群があり、軟玉(Nephrite)が混じっていることが確認されていたが、この回の分析で岩石学的に明確になったといえる。かつては、日本列島の縄文時代を中心としたヒスイ製品は硬玉(jadeitite)だけと考えられてきたが、飯塚氏の一連の研究により、そのなかにも硬玉と軟玉があることがわかってきた。多角的なヒスイの分析はより重要性を増してきたといえ、本研究はその基盤となりうるものである。
ガラスに関しては、深層学習により色調によるAI判別の構築を進めてきた。しかし、ガラスのように、1個体のなかである程度幅のある色調を判別しようとした場合、現在保有しているハイパースペクトルカメラでは範囲が広すぎることが判明した。現在の範囲でとれている色調で、判別するシステム自体は構築できるものの、その確度に問題がある。Photoshopで色調を合わせて任意の範囲を取る方法も試したが、極小遺物を対象とする画像補正用カラーチャートを利用したとしても、ガラスの色調を完全に一つの基準で統一させるほどの精度は得られない。そのため、色調からのアプローチに関してはより高機能のハイパースペクトルカメラの導入後に進めるほかないという結論に達した。
現在は、モンゴル、韓国、日本で撮影と分析を終えた資料を入力しており、そのデータの統合を試みている。例えば、これまでは、特定の元素の分布による範囲区分によって、ガラスの種類を分けていたが、今後は統計的にその区分を判別できるようになると考えている。観察による製作痕跡の記述といった要素も含めて、より確かな玉類の区分の提示を目指したい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究概要でもふれたように、当初考えてきた色調を中核として区分に関しては現在の機材では困難であることがわかった。高性能の機材で撮影を行った場合、深層学習用のデータベースとシステム自体の構築は可能であるが、通常のデジタルカメラで撮影したものを、データベースに参照させて簡易同定に利用することは難しくなる。行政発掘の報告の際に簡略的な同定を行う場合、色調の正確さを求めるよりも、ある程度分類に即した色調名称、形状、孔の観察情報を参照させるシステムのほうが適していることがわかった。高性能スペクトルカメラでの撮影に関しては、別の研究課題で進め、再度応用可能かを確かめる予定である。
研究の進展から、以上のような問題点と方向転換を導きだせたのも、一つの成果であり、現在、新たな方向で進めている。そのなかで、ガラスの流通を考える際に重要な草原ルートの資料が不足しているため、追加でモンゴルのナトロンガラス、植物灰ガラスの蛍光X線分析、撮影、観察が必要になっている。これについては来年度に行う予定であり、それによって概ね基礎データがそろう見込みとなっている。
石製玉類の岩石学的データはそろったので、これについては分担者と相談して、どのようなかたちで成果を示すかを相談中である。原石と製品を対照させうるものとなっており、日本列島の玉類の研究においては大きな意味があると考えている。

Strategy for Future Research Activity

本研究は、分析が進展することによって大きく方向転換することになったが、これまで述べたように岩石学的なデータ所得に関しては、当初の予定どおり進展しており、大きな問題はない。ガラスに関しては、これまでの研究によって、観察データ、区分された色調データ、写真はそろっており、入力を続けることで、上述したシステムの構築は進められると考えている。
ガラスの資料不足についてもすでにふれたところであるが、こちらもモンゴル科学アカデミー考古学研究所と協定を結んでおり、2024年9月以降に前1世紀~後1世紀の匈奴墓から出土したガラス類の分析調査を行う予定をすでに組んでいる。この種のガラスは大興安嶺を越えて東南方向にあり遼東山地部でも出土しており、可能であればデータベースに組み込みたいと考えている。
一方、分担者による分類区分システムを来年度に組み上げる予定であるが、それ以外にも玉類のデータベースとして価値があるので、電子書籍としてアクセスできるようにしたいと考えている。ただし、原石などは所有者の権利などがあるため、この点をクリアして、最終報告にのぞみたい。なお、画像補正用カラーチャートの色調マッチングは玉類の色調同定には不適格であったが、他の研究でも試みられたように、土器の色調区分には十分利用できた。こうした事例も含め、本研究の副産物が応用可能かについても整理を進めたい。

Causes of Carryover

研究概要で述べたとおり、色調のデータ化及び同定システムの構築において、研究方向の見直しが生じた。そのため、新たなシステム構築の練り直しが必要となり、追加のデータ取得を進めなければならなくなった。また、これに付随して、ベトナム、モンゴルの玉類のデータを取る必要が生じたが、各国のカウンターパートの予定が取れず、2023年度末から2024年度に渡航することになった。こうした事情から、最終的に次年度使用額が生じることになった。
2024年度に繰り越した助成金はモンゴルへの渡航、データ処理に使うことを予定している。モンゴルへの渡航は8月末であり、その後、データ処理を行う算段である。

  • Research Products

    (13 results)

All 2024 2023 Other

All Int'l Joint Research (3 results) Journal Article (7 results) Presentation (3 results)

  • [Int'l Joint Research] 公州大学校/高麗大学校(韓国)

    • Country Name
      KOREA (REP. OF KOREA)
    • Counterpart Institution
      公州大学校/高麗大学校
  • [Int'l Joint Research] モンゴル科学アカデミー(モンゴル)

    • Country Name
      MONGOLIA
    • Counterpart Institution
      モンゴル科学アカデミー
  • [Int'l Joint Research] ベトナム国立歴史博物館(ベトナム)

    • Country Name
      VIET NAM
    • Counterpart Institution
      ベトナム国立歴史博物館
  • [Journal Article] アジアにおける漢代併行期のガラス流通(追加版)2024

    • Author(s)
      中村大介・田村朋美
    • Journal Title

      璽印・ガラス・鉄器からみた西暦1-3世紀 日本列島・東アジアの広域交流の重層性

      Volume: - Pages: 46-63

  • [Journal Article] 長野県木島平村根塚遺跡出土遺物の理化学的分析2024

    • Author(s)
      田村朋美・谷澤亜里・中村大介
    • Journal Title

      璽印・ガラス・鉄器からみた西暦1-3世紀 日本列島・東アジアの広域交流の重層性

      Volume: - Pages: 64-82

  • [Journal Article] モヨロ貝塚出土のネフライト製玉環と銀環の化学分析とその考察2024

    • Author(s)
      飯塚義之
    • Journal Title

      北海道立北方民族博物館研究紀要

      Volume: 33 Pages: 1-15

    • DOI

      10.34330/hoppohmbulletin.33.0_001

  • [Journal Article] 盛岡市日戸遺跡出土の大型磨製石斧2024

    • Author(s)
      神原雄一郎・飯塚義之・小野章太郎・樋下理沙
    • Journal Title

      盛岡市遺跡の学び館令和4 年度館報

      Volume: - Pages: 21-26

    • DOI

      10.24484/sitereports.138771-122001

  • [Journal Article] 旭川市博物館所蔵 石製・金属製遺物の非破壊化学分析とその考察2024

    • Author(s)
      飯塚義之・柳瀬由佳
    • Journal Title

      旭川市博物館研究報告第・科学館研究報告

      Volume: 30・19 Pages: 8-13

  • [Journal Article] 匈奴の実像を求めて2023

    • Author(s)
      中村大介・臼杵勲
    • Journal Title

      草原世界の匈奴

      Volume: - Pages: 1-6

  • [Journal Article] 岩石学からみた考古遺物の研究: 北陸地方縄文時代前期のネフライト製石器とその来源2023

    • Author(s)
      飯塚義之
    • Journal Title

      2023年度日本考古学協会宮城大会「災害と境界の考古学」講演要項集

      Volume: - Pages: 203-212

  • [Presentation] 匈奴以前の活動2023

    • Author(s)
      中村大介・G.ガルダン・中村大
    • Organizer
      日本考古学協会第89回総会
  • [Presentation] 匈奴および鮮卑におけるガラス交易: 分析化学的アプローチ2023

    • Author(s)
      田村朋美
    • Organizer
      日本考古学協会第89回総会
  • [Presentation] 日本で出土する古代ガラスの産地: 元素分析および同位体比分析によるアプローチ2023

    • Author(s)
      田村朋美
    • Organizer
      第2回 人・モノ・自然シンポジウム

URL: 

Published: 2024-12-25  

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