2021 Fiscal Year Research-status Report
砕屑性ジルコンによる土器製作地の精密解析:古代物流解析ツールとしての可能性の検証
Project/Area Number |
21K18381
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 伸彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20452790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田尻 義了 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (50457420)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ジルコン / U-Pb年代 / 土器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は7月に内定を受けたものの,研究代表者の11月から3月までの第63次南極地域観測隊参加(7/1決定)に伴い,令和3年度は研究期間が非常に短縮された.しかしながら,以下のように非常に貴重な資料や新知見を得られることとなった. 九州大学所蔵,筑紫地区遺跡群から出土土器の室内サンプリングを実施し,計11点の土器を得ることができた.当初は,一般的な弥生土器のみをサンプリングする予定であったが,儀礼などで用いられる丹塗り弥生土器2点および須恵器2点も得ることができた.これらの資料については,研究分担者により,スケッチや出土遺構,器種,時期等の考古学的記載が行われた.丹塗りの弥生土器は,一般的な弥生土器と比較し,胎土の粒度が細かく,混和剤が少ない.須恵器はさらに水肥技術が高く,胎土は細粒であり混和剤は混入されていない.一般的な弥生土器だけでなく,丹塗りや須恵器も研究対象とすることで,ジルコンが粘土に由来するのか,混和剤として含まれるのかを検証することが可能となる. これらに加えて令和3年度は,自治体によって行われた発掘調査に同行し,遺跡内の風化土壌をサンプリングすることができた. 室内分析としては,比較的大きな弥生土器資料1点(312 g)から予察的にジルコン分離を行った.資料222 gを粉砕し,粒度の異なる5000粒子以上のジルコンを得ることができた.この結果は非常に驚くものであり,土器には相当量のジルコンが含まれることが明らかとなった.このことは,本研究の最も重要な課題である分析に要する資料量について,大きな知見をもたらした.つまり,分析に必要十分なジルコン100粒子を得るためには,単純計算で約4.4 g,粉砕時の資料のロスやジルコン混入の不均質性があるとしても,10 g程度の破壊で十分量のジルコンを得られるということになる.これについては,令和4年度も引き続き検証する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
丹塗り弥生土器や須恵器を含む予定よりも多くの土器資料および遺跡の風化土壌を採取できた.また,想定以上のジルコンが含まれ,資料必要量がおおよそ10 gであるという結果が出たため.
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Strategy for Future Research Activity |
当初は古賀市や朝倉市の遺跡についても研究対象とする予定であったが,A筑紫地区遺跡群で多様な土器が数多く得られたこと,B 資料には十分量のジルコンが含まれること,C現地より十分量の風化土壌を得られたことから,同遺跡群をテストフィールドとして,より詳細に解析しつつ,ジルコンを用いた土器解析法の有効性を検証する. 研究計画でもあるように,本研究で重要な課題は,資料の必要量の把握と土器中のジルコンの起源(粘土or混和剤)の理解である.必要量の把握については,追加で弥生土器2点からジルコン分離を実施し,令和3年度の結果(必要量10 g)を検証する.ジルコンの起源については,丹塗りの弥生土器や須恵器からジルコン分離を実施し,詳細に検討する.両資料からもジルコンが分離されるようであれば,少なくとも粘土を起源とするジルコンも存在することになる.その場合,粒度や年代,鉱物種同定などの結果からジルコンの起源を検証することになる. 土器以外の資料として,令和4年度は遺跡群内の岩石および遺跡群のすぐ近くを流れる河川(牛頸川)の砂利のサンプリングを実施する.これらと令和3年度に採取した風化土壌からジルコン分離を行う.これは,混和剤として何が使用されたか,川砂なのか遺跡内の土壌なのか,また,粘土は現地性のものが使用されたのかを検証する目的で実施する. これら全てのジルコンについて,年代測定を行う事で上記した2点について検証するのはもとより,筑紫地区遺跡群についての土器製作の実態を明らかにするとともに,砕屑性ジルコンを用いた土器製作地の精密解析のための有効性を検証する.
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Causes of Carryover |
第63次日本南極観測隊への参加により,ジルコン分離を行った資料の絶対数が予定より少なくなったため,次年度使用額が生じた.令和4年度は,アルバイトの雇用や委託によって,多数の資料からジルコン分離を行うための経費として使用する予定である.
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[Journal Article] Petrology and zircon U-Pb geochronology of pelitic gneisses and granitoids from the Dai Loc Complex in the Truong Son Belt, Vietnam: Implication for the Silurian magmatic-metamorphic event2022
Author(s)
Vuong, B.T.S., Osanai, Y., Nakano, N., Kitano, I., Adachi, T., Tuan, A.T., Binh, P.
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Journal Title
Journal of Asian Earth Sciences
Volume: 226
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Geochronology and geochemistry of granitoids from the Mongolian Altai2022
Author(s)
Boldbaatar, D., Osanai, Y., Nakano, N., Adachi, T., Sereenen, J., Kitano, I., Syeryekkhaan, K.
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Journal Title
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
Volume: 116
Pages: 293-308
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Petrology and geochronology of andalusite- and sillimanite-bearing kyanite metapelites from the Gobi Altai Mountains: Evidence for prolonged convergent tectonics in the Central Asian Orogenic Belt2021
Author(s)
Nakano, N., Osanai, Y., Jargalan, S., Adachi, T., Dolzodmaa B. Kundyz, S., Owada, M., Satish-Kumar, M.
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Journal Title
Lithos
Volume: 400-401
Pages: 106362
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Petrogenesis of the Khangai granitoids, central Mongolia: Implications for the crustal generation2021
Author(s)
Boldbaatar, D., Osanai, Y., Nakano, N., Kamei, A., Adachi, T.
Organizer
日本鉱物科学会2021年年会
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[Presentation] Geochronology of calc-silicate and related rocks in the Mogok Metamorphic Belt, Myanmar2021
Author(s)
Zaw, H., Osanai, Y., Nakano, N., Adachi, T., Khaing, N.H.
Organizer
日本鉱物科学会2021年年会