2021 Fiscal Year Research-status Report
A study of dromedary camel management practices striking a balance between conservation of the mangrove forests and improvement of local communities' livelihoods
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21K18392
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
縄田 浩志 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (30397848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 隆 石巻専修大学, 共創研究センター, 特別研究員 (00215633)
星野 仏方 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (80438366)
中島 敦司 和歌山大学, システム工学部, 教授 (90283960)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 家畜管理 / 森林保全 / 生計維持 / ヒトコブラクダ / マングローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,砂漠化対処におけるこれまでの学術的・実践的前提を打ち破って,牧畜は必ずしも森林減少の主因ではないという,挑戦的な視座を獲得することにある.熱帯・亜熱帯地域の沿岸域は,バイオマスや生物多様性の観点から重要な地域であり,ほぼ北緯・南緯30度の範囲内にはマングローブ生態系やサンゴ礁生態系という沿岸生態系が発達している.一方,乾燥地域は,単位面積あたりのバイオマスや生物多様性が最も低い地域である.乾燥地域とマングローブ・サンゴ礁域の3者が連続して重なり接する,熱帯・亜熱帯の乾燥地の沿岸域では,ヒルギダマシ((以下マングローブ)を優占種とするマングローブ林と裾礁を中心としたサンゴ礁が共存し,マングローブ生態系とサンゴ礁生態系が相互に関係し合う特有の沿岸生態系を発達させている.同時に常緑マングローブの枝葉はヒトコブラクダ(以下ラクダ)の通年の飼料として地域住民の生計維持に不可欠な資源である.本研究では「牧夫がマングローブ林分の増加と減少の潜在性のある場所を理解し,ラクダの摂食行動を管理することが,林分面積の場所ごとの増減に影響し,結果的に林分全体が維持される」可能性に焦点をあてて,植物生理生態学,比較栄養生理学,環境動態解析学,資源管理学をあわせた多角的な視点から「乾燥地マングローブ林の維持管理においてラクダは単なる食害ではない」ことを検証する.その結果をもとに,乾燥地の沿岸域ではラクダ牧畜はマングローブ林減少の主因ではないことを明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レビュー論文(縄田浩志「マングローブに対するヒトコブラクダの採食圧をめぐって」草炭研究14(1): 23-33)において,これまでの研究によって明らかにしたことと,実施中の研究テーマ・方法論を明示した.概要は以下のようにまとめられる.研究代表者と研究分担者らがこれまで実施したエジプトとスーダン紅海沿岸における調査では,植物生理生態学からは,ラクダによる緑量として20%程度の被食はかえってマングローブのシュート(葉・枝)伸長を大きくすることがわかった(Matsuo et al. 2016; Teraminami et al. 2014).比較栄養生理学の視点からは,摂食対象となるマングローブ,塩生植物,マメ科灌木といった植物種の依存度が雨季・乾季の季節により大きく異なることが把握された(縄田ほか 2013, Sakata et al. 2013).環境動態解析学からは林分全体においてラクダ採食圧が高いところと低いところがモザイク状に存在することが観察され,その要因として自然要因と人間による社会要因の両方の影響が認められた(縄田ほか 2014).以上のような研究結果をふまえて,1) 葉面積・葉数・バイオマスについてラクダ採食の影響の有無と水分分配の関係を樹木の上部・下部において比較検証,2) マングローブの飼料価値が高まるとされる雨季におけるラクダ行動追跡とマングローブ摂食部位の定量的把握, 3) 高解像度衛星画像を用いた林分内の場所ごとの面積の増減の評価を設定することを計画した.
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Strategy for Future Research Activity |
とくに注目するマングローブ林分は,2011~2013年に継続調査を実施したスーダン紅海沿岸クラナイーブ地域である.5年後の2018年に高解像度衛星画像解析をもとにマングローブ林分の面積の動態(2010~2017年)を追跡したところ,面積の拡大傾向を確認できたマングローブ林分の特定箇所は,まさに当時(2011年)地域住民が稚樹・若木をラクダに食べさせないようにしていた場所であった.一方,若個体に稚樹の摂食を許していた外海に面した砂州上に発達する林分では,緩やかな縮小傾向が見られた.スーダン紅海沿岸クラナイーブ地域のマングローブ林分に焦点をあてたデータ解析に基づき,マングローブ林の場所ごと季節ごと,またマングローブ生長段階に応じた,適切なラクダ管理を軸とした持続的で統合的な資源管理体制を考察するために,スーダンにおける現地調査を計画したが,2021年度(初年度)には新型コロナウィルス感染症の影響により実現しなかった.ただし受入組織である紅海大学と密なコミュニケーションをとりつつ,議論した今後の実施に際しての課題認識に基づき,2022年度には現地調査を推進していく計画である。
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Causes of Carryover |
2021年度(初年度)には新型コロナウィルス感染症の影響により国内出張が計画通り実施できなかったため,2022年度(次年度)に実施予定の国内出張また海外の現地調査にあてる計画である。
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