2021 Fiscal Year Research-status Report
関係論的経済地理学に基づく「地理的ネクサス」の探索的研究
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21K18400
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
與倉 豊 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (70586552)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 産業集積 / イノベーション / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の産業集積およびイノベーションをめぐる厚みのある研究蓄積を検討し,関係性やネットワークを構造的観点からアプローチするものについて,理論および定性的・定量的な分析手法について概観した.文献研究の成果は展望論文としてまとめ,下記のような成果を得た. すなわち,産業集積の強みを説明する際には,しばしば場所固着的な知識の存在が重要になるとし,ヒトに体化し,容易に移動させることができない知識が,局地的な学習や協働を活発化させ,地域が恩恵を受けるイノベーションをもたらし,ひいては地域の競争力の向上に繋がると指摘した.一方,集積外のネットワークについても注目が集まるとし,産業集積とイノベーションをめぐる研究動向を概観したうえで,近年研究蓄積が進みつつある産業固有の知識ベースとテンポラリー・クラスターとの関連性について改めて検討した.また産業集積の進化プロセスにアプローチする進化経済地理学の成果を確認し,エコシステムのように新たな概念を紹介したうえで産業集積政策の展望について示した. さらに地理的な関係性の束・連鎖としてネクサスを定義し,産業の地域的集中・分散に関する議論との接合可能性について検討した.そのほかに,福岡市を事例として,情報・人材のフロー,都市集積,産業集積の実態に関して,国勢調査と経済センサスの小地域統計データをもとに,人口および産業の分布を地図上で示し,都市特有の関係構造を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,文献研究を進展させることができた.定量分析については,特許データをもちいて関係性を描写する新たな手法を探索している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は都市の関係構造に関する分析が中心に据えられる.なお昨年度に研究が完了した別の民間の助成研究においては,特許データのネットワーク分析について研究が進展しており,本研究の地理的ネクサスの可視化においてそれら研究成果や分析枠組みを活用できないか検討している.
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Causes of Carryover |
学会がすべてオンライン上で行われたために,学会参加のために計上していた旅費分が未使用額に反映されている.さらに文献研究を優先し,当初予定していたデータ分析は次年度に行うことにしたため未使用額が積み増しされている.未使用分についてはデータ入力のための人件費,および投稿論文の英文校閲費,都市に関するデータ入手のための旅費として使用予定である.
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