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2021 Fiscal Year Research-status Report

リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力を統一した意思決定理論の実験的検討

Research Project

Project/Area Number 21K18436
Research InstitutionFuture University-Hakodate

Principal Investigator

川越 敏司  公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (80272277)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 瀧澤 弘和  中央大学, 経済学部, 教授 (80297720)
Project Period (FY) 2021-07-09 – 2024-03-31
Keywords意思決定理論 / 行動経済学 / 実験経済学
Outline of Annual Research Achievements

リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力に関するこれまでの研究を総合し、これらの選好の特徴を統一的にとらえることのできる意思決定の総合理論を開発するために、まず従来研究のサーベイを実施した。従来研究では、これらの選好のうち2つの間の相互作用をとらえた研究がほとんどであり、4つ全てとなると1件しか見つからなかった。
そこで、これらの様々な選好間の相互作用に関する基礎データを得るために実験室実験を実施した。実験では、リスク選好と時間選好、リスク選好と社会的選好、時間選好と社会的選好、そしてリスク選好・時間選好・社会的選好の3つが関係する設問を被験者に回答してもらった。それに加えて、被験者の認知能力を測定した。なお、コロナ禍のため実験はオンラインで実施した。こうして得られたデータは分析中であるが、今後このデータを使用して意思決定の総合理論を開発する手がかりにする予定である。
また、こうした意思決定理論に関して最近問題となっているのが「選好の安定性」である。これは、ある時点で測定された選好と別の時点で測定されたものとの間には著しい違いが見られる現象をいう。例えば、災害等に直面する前後で、他の要因をコントロールしたとしても、リスク選好に顕著な違いが見られることが知られている。なお、これらの研究は全てフィールド調査に基づくものであり、他の要因を十分にコントロールできているとはいいがたい。そこで、「選好の安定性」に関する研究をしている研究者の協力を得て、フィールドと同じ条件での実験を統制された実験室内で実施することで、選好の安定性に関する基礎データを得る計画を準備中である。
最後に、こうした行動経済学上の発見について再現性がないということが社会的に問題視され始めたため、「行動経済学の死」を考えるシンポジウムを開催し、こうした問題に関する専門家の意見を聴取した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

まず、リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力に関するこれまでの研究を総合した意思決定の総合理論の開発という当初の目的に関しては、実験室実験を終え、基礎となるデータを確保しえたという意味で、当初の計画通りに研究が進んでいると言える。ただし、コロナ禍のためオンライン実験しか実施することができず、また、対面での実験とオンラインの実験とで被験者の態度の違いなどが結果に影響するかどうかなどは学会でも議論が続いており、得られたデータが決定版であるかどうかは、いまのところ判断ができない。
また、研究を進めていく中で、「選好の安定性」の問題や「行動経済学の死」にまつわる研究の再現性問題の重要性が明らかとなってきた。本研究が目指している意思決定の総合理論にとって、その基礎データとなる実験結果の安定性や再現性に問題があるとなると、研究の大前提をゆるがしかねないことになるため、急遽、選好の安定性や研究の再現性問題についても研究する必要が出てきた。ただ、これらの研究についても、一定程度の進展をみることができたため、本研究課題はおおむね順調に進展しているとみてよい。

Strategy for Future Research Activity

まず、本研究の当初の課題であるリスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力に関する意思決定の総合理論の開発に関しては、実験室実験によって得た基礎データを統計分析し、傾向性ををつかむことが最初の課題となる。併せて、可能ならば対面での実験も実施し、対面での実験とオンラインの実験とで違いがあるかなども確認したい。
選好の安定性については、フィールド調査による従来研究によって得られた知見を、よりコントロールされた実験室実験でも検証することを計画している。
研究の再現性問題については、昨年度に引き続き、シンポジウムやセミナー等を通じて専門家に意見を聴取する機会をもつ。また、昨年度開催した「行動経済学の死」を考えるシンポジウム以来、蓄積してきた知見をとりまとめ、本や雑誌記事として発表する計画が進んでいる。
今年度は引き続き、これら3点の研究課題を順次進めていくつもりである。

Causes of Carryover

コロナ禍のため、実験室実験をオンラインで実施するしかなく、そのため被験者の募集状況がふるわず(参加率、欠席率が高く)、当初予定していた謝金額を使い切ることができなかった。本年度は、可能な限り対面で実験室実験を実施する予定であり、それにより昨年度実施できなかった分も含めて被験者募集を増強するため、そこで繰り越し分を消化する予定である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2022 2021

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 3 results) Presentation (5 results)

  • [Journal Article] 行動メカニズム・デザインに関する概説2022

    • Author(s)
      川越敏司
    • Journal Title

      オペレーションズ・リサーチ

      Volume: 第67巻第3号 Pages: 128-135

    • Open Access
  • [Journal Article] 実験経済学から見たベーシック・インカム2021

    • Author(s)
      川越敏司
    • Journal Title

      社会保障研究

      Volume: 第6巻第3号 Pages: 271-289

    • Open Access
  • [Journal Article] ルイス『コンヴェンション』におけるコンヴェンションと共通知識の概念化ーゲーム論的制度論の観点から2021

    • Author(s)
      瀧澤弘和
    • Journal Title

      中央大学経済研究所年報

      Volume: 第53号 Pages: 295-331

    • Open Access
  • [Presentation] 問題提起2021

    • Author(s)
      川越敏司
    • Organizer
      「行動経済学の死」を考えるシンポジウム
  • [Presentation] 疑わしい研究慣習(QRP)に関するモデル2021

    • Author(s)
      川越敏司
    • Organizer
      IPO研究会
  • [Presentation] 教えて!川越先生【実験経済学編】2021

    • Author(s)
      川越敏司
    • Organizer
      行動経済学ゆるゆる配信
  • [Presentation] 現代経済学 第4回 行動経済学と実験経済学で何がわかってきたのか2021

    • Author(s)
      瀧澤弘和
    • Organizer
      中央大学クレセント・アカデミー
  • [Presentation] 現代経済学 第6回 実験で変化しつつある開発経済学2021

    • Author(s)
      瀧澤弘和
    • Organizer
      中央大学クレセント・アカデミー

URL: 

Published: 2022-12-28  

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