2023 Fiscal Year Research-status Report
高年齢者の「すりかえ合意」と労働力均衡:行動実験による競争回避的な就業選択の分析
Project/Area Number |
21K18441
|
Research Institution | Keiai University |
Principal Investigator |
高木 朋代 敬愛大学, 経済学部, 教授 (20383367)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 紘康 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (90709312)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
|
Keywords | 高年齢者 / 就業選択 / すりかえ合意 / 労働力均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
高年齢者の雇用促進はあらゆる国々で重要課題となっている。しかし現実は厳しく雇用機会は限られている。「誰が残り、誰が去るのか」を巡って生じるコンフリクトは、職場環境の悪化を招き企業活動に負の影響を齎しかねない。本研究の目的は、この問題を最小化する現象である「すりかえ合意」行動(就業希望者全員が就業できる状況ではない中で、自分の真意をすりかえて引退や転職といった二次選択を受け入れる行動)について、1)この行動は、職場での人事管理や学校・家庭での経験を通じて後天的に習得されるものなのか。また体得する人には、あらかじめ何らかの資質や特性があるのか、2)一旦体得されたならば定着し、雇用の現場のみならず、他の場面においても発動され、当該者特有の行動特性となりうるのかを、社会行動実験によって解明することにある。この行動は身を引いた全ての人を引退に導くわけではなく、次なる転職先や再就職先の探索を自発的に開始することを助け、結果として、高年齢者の労働市場における均衡と人材の適材適所への再配置を促す可能性を持っている。 当該年度は、関連する先行研究サーベイとともにヒアリング調査を実施し、行動実験における分析枠組み、および実験設計の要となり得る以下の仮説を得た。1)これまでの雇用政策がマクロ視点で策定されがちであったがゆえに想定し得なかった「すりかえ合意」というミクロな人間行動が、雇用の進展度合いを左右する一要因となっている可能性がある。2)この就業行動は、①企業の人事施策によって修正される現状維持バイアスおよびサンクコストバイアスの効果、②保有効果、③認知的不協和の解消、④人々に備わっている利他性・向社会性によって発動されている可能性がある。今後の研究調査では、概ね後天的に習得されたと考えられるこれらの行動規範が「すりかえ合意」行動を誘発している可能性を、社会行動実験によって検証する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度まで新型コロナウイルスの影響により国内外での定性調査が困難であったことから、分析枠組みおよび実験設計の構築に必要としていた定性調査を当該年度から再開するはこびとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
定性調査が当該年度から可能となり、これまでの調査研究から導出された仮説に基づいて分析枠組みと実験設計の妥当性を検討したのち、行動実験・分析を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により昨年度までは定性調査が困難であったことから、当該年度と次年度にこれらの調査研究が持ち越された。次年度はさらに定性調査を進め、これに基づき得られた仮説に従って行動実験を実施する。
|