2021 Fiscal Year Research-status Report
Evidence-based managementアプローチの使い道・使い方研究
Project/Area Number |
21K18443
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三橋 平 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90332551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦尾 正彦 順天堂大学, 医学部, 教授 (00213504)
三橋 立 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50286720)
徳川 城治 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80348945)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 経営学 / エビデンス・ベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、エビデンス・ベースの経営学研究を医療現場のコンテクストにおいて行うことである。エビデンス・ベースの経営学研究とは、主に介入実験を行い、その前後比較や、差分の差の検定をしたコントロール群との前後比較を行い、ある経営施策や経営政策が組織のパフォーマンスや、組織メンバーの行動様式にどのような影響を与えるかを検証する研究アプローチである。このような研究アプローチが発展している背景は2つある。1つ目は、経営学研究が理論や文献の発展にのみ注力を行い、その結果、実務家とは無縁のアカデミック世界が形成されてきたことである。例えば、法律系のジャーナル論文は現場の法律家が読み、医療系のジャーナル論文は現場の医師が読む。しかし、経営系のジャーナル論文は経営の現場に立つ者に読まれることはほとんどない。この原因として、あまりにも理論の貢献に偏重してしまい、本来あるべき、実務家の思考を促進するという側面が失われたことである。2つ目は、経営学研究では新規性が重視されて、そのため、既存理論の再検証や追加検証が行われてこなかった。さらに、多くの実証研究では、内生性の問題についての議論(例えば、逆因果、欠落変数バイアス、測定エラー)の問題が解消されてこなかった。その結果、得られた知見の正確性が問われている。このような背景から、ある経営政策や施策を実施する効果を測定する、という観点からエビデンス・ベースの経営学研究に対する関心が高まっている。 このアプローチに対するポジティブな評価は少なくないが、一方で、どのような限界があるのか、研究を計画するうえではどのような点に注意や考慮が必要なのか、の知見が限られている。そこで、この研究では、単に介入実験を行うだけでなく、その経験から得られた知見を活かしエビデンス・ベースの評価を行うことを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍発生の影響により、共同研究者が所属する医療機関への訪問や現地でのデータ収集が難しくなり、計画していた研究スケジュールとは異なる進度での研究活動を余儀なくされた。そのため、研究体制の見直しが迫られたり、また、学会の開催形式が変更になったため、研究を進める上でのマイルストーンを失ったことも進捗に影響を与えている。 研究課題の1つは、前回の挑戦的研究を引き継ぎ、コロナ禍を自然実験における介入と見立て、それが急性期の脳卒中患者に対する治療の遅延にどのような影響を与えているのかを測定するものである。パンデミック発生後の2年間で、遅延に対する影響を報告している事例は約30件見つけられた。しかし、これらの研究は、都市ロックダウンが搬送件数に与える影響を測定するような比較的短期的データを用いたものが多く、1年データを用いていた事例は2件であった。我々は後発の利を活かし、パンデミック発生後の2年間のデータを使用、さらに、比較対象とした2019年期間のデータも合わせると3年間のデータを使用している。現在は、この2つの期間のデータ比較を行った検証結果を論文にまとめ、投稿している段階である。 2つ目の研究については、今後の研究計画とも関連するため以下でまとめる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、2つ目の研究を進めることである。ここでは患者誤認を防ぐための看護師の視線に着目した研究を行う。患者誤認とは、投薬、注射、食事の配膳の際に、本来であれば他人に与えるべきものを間違って与えてしまうことを指す。これはヒューマンエラーの1つとも考えられるが、事前調査では部署間によってバラツキがあったり、経験によってもバラツキがあることが判明している。このバラツキを無くすために、患者を認識、確認する際のルーティン、やり方、ルールの見直しや、職場内で使用する道具に変更を加えたい。そして、本研究課題では、その知見を得るための介入実験を行うことを目的としている。 具体的には、以下の介入実験を予定している。実験の対象は看護師である。職場内に実験スペースを設け、疑似的な医療行為をダミーの患者(実験協力者)に対して行ってもらう。この医療行為は投薬や注射、書類確認を予定している。また、被験者である看護師にはウェアラブルカメラを装着してもらい、その視線の方向性を動画データとして記録する。実験スペースとダミーの患者の各所には、目印をつけておく。動画データでは、その目印をAPIを使用して解析し、1/60秒ごとに記録された静止画を読みこむ。このデータを分析し、視線の流れを類型化し、さらに、どこに傾注を与えることで患者誤認を防げるのか、の介入を検討する。再実験では、道具、資料、治療器具の色を変えるなどをし、その効果を測定する。 この実験は、早稲田大学の倫理委員会では承認され、順天堂大学での倫理委員会での承認を待っている。パイロット・テストに対する協力者は確保しており、実験を実行するまでの準備は整っている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍発生の影響により、共同研究者が所属する医療機関への訪問や現地でのデータ収集が難しくなり、計画していた研究スケジュールとは異なる進度での研究活動を余儀なくされた。そのため、研究体制の見直しが迫られたり、また、学会の開催形式が変更になったため、研究を進める上でのマイルストーンを失ったことも原因である。
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