2022 Fiscal Year Research-status Report
大学等の実験室における多様性をふまえた客観的な評価指標の深層学習による開発
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21K18491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
主原 愛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (10825665)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 実験室 / 実験安全 / 大学 / 画像解析 / 深層学習 / 指標抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験室の安全の状態を科学的に表現する指標抽出を目的として、局所排気装置(Fume hood, FH)に着目した以下の検討を行った。 1. 定量的データの関係性の深層学習による解析:収集してきたデータの関係性について考察を行うべく、深層学習による回帰モデルの構築を行った。データ間で一定程度の関連性を示すケースは認められたものの、FHの使用実態を表現する新たな指標の抽出は叶わなかった。ここでの検討から、FHの状態評価には、客観的な定量データに加え、FH使用者やFH管理者、FHメーカーなどの視点に応じた評価が欠かせないと考え、使用者目線での情報の一つとして使用用途に関する情報を取り入れて検討することとした。 2. 使用目的指標に基づくFHの状態評価:FH個別の状態をある指標で定量的に評価することを目指して解析した。FH使用者がFHの使用目的に関する4つの指標を用いて収集済みの写真画像個別に指標の評価を行って解析の「教師データ」が作成し、これを学習する畳み込みニューラルネットワーク手法を用いたモデルを、上記の各指標に対する各写真画像の状態評価が正規化した値として算出されるよう構築した。この結果から、FHの状態が様々な指標で評価できる可能性が示され、評価者の感覚で捉えられがちな個々のFHの状態は科学的・定量的に評価できることを確認した。 3.立場の違いと評価指標に関する検討:「FH使用者」か「FHメーカー」かといった視点が異なれば、FHの状態の良しあしの判断は異なると推測される。FHに関する立場の違いが前述の評価指標の状態評価値を用いてどう表現されるかを検討したところ、使用者とメーカーの状態評価値には相関は見られず、メーカーの評価指標は使用者のそれとは独立に存在する可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1. 定量的データの関係性の深層学習による解析」については、モデル構築と解析は初年度に引き続き行い、本年度は当初の検討方針に加えるべき視点が明らかになった点で、来年度に向けて重要な知見を獲得できたと自己評価している。 「2. 使用目的指標に基づくFHの状態評価」については、ある指標を用いてFHの写真画像の状態評価の解析を行い、深層学習により写真画像からその使用実態を指標の定量的な値として算出する手法が試行的に確立できた点で、順調に進められていると自己評価している。 「3.立場の違いと評価指標に関する検討」については、個々の機器の安全に関する状態を評価する際には、誰が評価するのかという視点が不可欠であるとの気づきに基づき、当初の計画から方向転換して進めている。上述2の手法を用いれば立場毎の相関を検討できた点で、今後の解析により研究成果は十分に上がると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
FHの使用状況を撮影した写真で、使用実態を判断できる指標の探索を行う目的で、深層学習を用いたモデル構築を引き続き進め、状態評価する立場の違いをふまえた指標を明らかにしていく。 FHの定量的データを用いた解析と状態評価値による評価については、既存の指標を用いて写真画像の状態評価値を算出する深層学習モデルをベースに、新たな指標を抽出できるモデルの開発を行い、その妥当性を検討する。また、解析や検証に用いる写真画像の撮り方に変更が必要な部分があることを考慮し、研究協力先に出向いて撮影を実施する。 立場の違いによる評価指標の違いの解明については、FH使用者、FHメーカー、FH管理者に依頼して写真画像の評価を実施してもらい、それらのデータを集約して解析を進める。 これらの検討結果をふまえ、実験室の状況を定量化し、議論の根拠となる実験室の実態を科学的に表現する指標を、FHを例に抽出する。併せて、実態を客観的に表現でき、実態をふまえた実験室安全に関する合理的で実効的な教育・管理手法のための指針作成を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初の計画で令和4年度前半に実施する予定であった研究打合せが実施できなくなった関係で、実験の実施にかかる費用(消耗品、謝金、旅費)は、次年度に繰り越して使用する計画である。また、情報の入力業務の研究補助業務のために人件費を計上していたが、解析のために必要なデータ入力作業付加が予定より小さかった。次年度は、上記の繰り越し分を含め、データ収集や解析にかかる費用を物品費として支出するほか、研究打合せおよびデータ撮影、成果発表のための旅費、撮影の協力者に対する謝金を計画している。
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Research Products
(1 results)