2022 Fiscal Year Research-status Report
ポストコロナ時代における異文化ネットワーキングに基づく協働型主体的学習モデル
Project/Area Number |
21K18533
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
後藤 正幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40287967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 真晃 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (30379028)
山下 遥 上智大学, 理工学部, 准教授 (90754797)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 能動学習 / ポストコロナ / 異文化ネットワーキング / 主体的学習 / 協働型学習 / ネパール / 異文化交流 / 教育効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ネパールをフィールドとして展開する「学生主体型海外連携教育プログラム」を実証的評価の場とし,ポストコロナ社会を想定した異分野・異文化協働型の主体的学習モデルを提案することを目的としている。2022年度は,前年に引き続き,新型コロナウイルス感染症の影響を受け,日本側の研究チームが日本人学生を引率する形でのネパール研修プログラムの実施が困難であった。このような状況下,ネパールと日本をオンラインでつないで,リアルタイムのオンラインシンポジウムを実施するなどの取り組みが実施できたが,対面での交流ができないことの影響は学生達に取っては非常に大きいものであった.一方で,オンライン形式で実施したシンポジウムのノウハウや経験は,今後の日本-ネパールの両国を繋いだ教育プログラムの設計に対して様々な知見を提供してくれており,今後の研究の発展に結び付けるための準備を進めている。WHOによる「緊急事態宣言終了の発表」を受け,2023年度はネパール現地におけるフィールド研修プログラムを実施できる可能性が高まっているが,対面でのフィールドプログラムの前後において,オンライン形式での研究会や勉強会が教育効果を発揮することが期待できる。 また,2022年度は,新型コロナウイルス感染症の影響下においても実施可能な研究として,大学生であった時期に本研究で対象としているプロジェクトで学び,すでに卒業しているネパール人学生と日本人学生の双方に対して追跡調査を実施した。この調査はオンラインでのアンケート調査形式で実施し,このアンケートの質問項目については,研修プログラムの教育効果と共に,長年の時間を経過したあとのその後の人生への影響度を評価することができるように入念にデザインした。この追跡評価の結果は,日本人学生とネパール人学生のそれぞれに対して統計分析し,本プログラムの有効性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,ポストコロナ社会を想定した異分野・異文化協働型の主体的学習モデルを提案し,実証的にその効果を検証することを目的としているが,2022年度も依然として新型コロナウイルスの影響が残っており,様々な制約を受けた中での研究活動を強いられた。特に,日本側の研究チームや学生達のネパール現地への海外出張,並びにネパール学生の来日プログラムの実施が実施できない状況が続いたことに加え,日本とネパールの双方において,新型コロナウイルス感染症の影響が日々変化したため,直接的な研究交流活動が困難となった。 このような中,リアルタイムのオンラインシンポジウムを実施したことは成果として挙げられるが,日本人学生にとっては,やはりネパール現地での実体験を通じた学びの影響は非常に大きく,オンラインのみでの異文化交流には何からの仕掛けや工夫が必要であることが明らかとなった。このように2019年以前のネパール現地におけるプログラムへの参加学生が全て卒業し,現地経験を持たない学生が主体となったことの影響は大きかったが,強い活動の制約を受けた期間に蓄積されたオンライン上での活動に関する経験やノウハウは,ネパール現地での研修プログラムが再開された後においても活用できると考えている。 一方,実際の研修プログラムの実施のハードルが高い中,可能な研究アプローチとして,対象プロジェクトの卒業生に対して追跡調査を行い,対象プログラムの学習効果に関する分析を行った(その成果は日本教育工学会春季全国大会で発表済み)。このような卒業生に対する追跡調査は,対象プロジェクトの教育効果や改善点について評価するために重要であり,今後もさらに分析を進める予定である。 2023年度は大幅に新型コロナウイルス感染症の影響が少なくなった環境下,引き続きポストコロナ社会を見据えた異文化交流プログラムの有り方について研究を深める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,ネパールをフィールドとした「学生主体型海外連携教育プログラム」を実証的評価の場とし,ポストコロナ社会を前提とした異分野・異文化協働型の主体的学習モデルの提案を目的としている。そのため,対象教育プログラムが「学生」,および「大学」に与えた影響について詳細な追跡評価を行う。その際,対象教育プログラムの効果と重要な機能を正しく現状評価することに加え,さらに有効な学生主体型教育プログラムを設計するための「あるべき姿(To Beモデル)」を明らかにする。この分析結果をベースに研究組織全体で徹底的な議論を行い,「あるべき姿(To Beモデル)」の構築を行う。構築されたTo Beモデルは,教育プログラムの設計にフィードバックし,次年度以降のプログラムの設計へと結びつける。また,参加学生のソーシャルディスタンスを確保するため に,研究代表者が長年主査を務めてきた早稲田大学・理工総合研究所のプロジェクト研究「次世代elearningに関する研究」の成果を援用し,情報技術を最大限に活用したフィールドワークの方法論について徹底的な検討を行う。具体的には,以下の流れで取り組む。 (1) アンケート調査/インタビュー調査:対象教育プログラムの長期的観点の教育効果として,構造化した自由記述回答項目を交えたアンケート調査を設計し,卒業生に対する追跡調査を実施する。 (2) 定量的実績調査:15年間に渡って本教育プログラムを実施した結果について定量的な評価と分析を行う。 (3) To Beモデルの構築およびプログラムへの反映:以上の対象教育プログラムの長期的観点からの分析結果をベースとし,メンバー全体で「あるべき姿(To Beモデル)」を検討する。 以上により,情報技術を最大限に援用したモデルを発展させることで,ポストコロナ社会下で可能となる異分野・異文化協働型主体的学習モデルをデザインする。
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Causes of Carryover |
2022年度も前年度に続き新型コロナウイルス感染症の影響が持続し,ネパール現地に日本人学生を引率する形での研修プログラム実施は困難な状況となった。そのため,2022年度中に予定していた研修プログラムは延期判断となり,2023年度以降に実施する方向で調整している。2022年度は,対象とする教育プログラムに過去に参加した卒業生に対して追跡調査を行い,アンケート調査によるデータ収集を進めたが,対面調査等が実施できなかったため,旅費等の支出が生じず必要最小限の費用で済んだ面がある。また,研究上の制約が生じたことから,予定していた国際会議等での成果発表も延期とせざるを得なかった。これらの研究活動に必要となる旅費については,2023年度は必要に応じて計画を進める予定である。 2022年度に予定していたネパール人研究者の研究補助業務については,計画に近い形で支出を行うことができた。この研究補助者との研究活動についても,2023年度も本研究課題の成果のまとめに向けてすでに綿密な研究の計画を進めており,可能な限り,年度内の適正な雇用と支出を進める予定である。
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Research Products
(6 results)