2023 Fiscal Year Research-status Report
利他行動の功罪と過剰適応に関する研究:自殺予防教育プログラム構築を目指して
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21K18541
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
荻田 純久 関西学院大学, 教職教育研究センター, 准教授 (50369617)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | メンタルヘルス / 児童期 / 青年期 / 母親 / コロナ禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、コロナ禍における親子のメンタルヘルスの背景要因を明らかにするために新型コロナウイルス感染等の諸事情により学校に行けない経験が過去30日間にあった児童期、青年期の子どもを子育て中の母親を対象とした調査データを分析した。その結果、女児の母親は「精神的疲労」が高まると「子どもとの活動」の頻度が高くなり、逆に「子どもとの活動」の頻度が高くなると「精神的疲労」が軽減することが示されたが、男児の母親ではそうした傾向はみられなかった。次に「精神的疲労」から「メンタルヘルスハイリスク」へのパス係数において、子どもの性別による有意差が認められ(5%水準)、コロナ禍による「精神的疲労」が蓄積した場合に女児の母親の方がメンタルヘルス悪化に繋がりやすい可能性が示唆された。青年期の子どもを子育て中の母親においても精神的疲労が蓄積し、メンタルヘルスが悪化、そして精神疾患が発症するリスクは子どもが男性ではなく女性である方が高くなる可能性が認められた。一方、青年期においては児童期のような母娘が一緒に活動することで精神的疲労が軽減されるモデルに当てはめることが出来なかった。コロナ禍のメンタルヘルス悪化要因の一つとして、早期から女性であることが言われていた(Pierce他,2020)。コロナ禍の母娘においてお互いの精神的疲労を察知し、児童期の子どもは一緒に活動する中で、青年期の子どもは一緒に活動することは少ないものの対話等により相互にケアギビング行動をとっていた可能性も考えられる。その中で普段よりもメンタルヘルスが悪化しているため母娘で無理をしてしまい、結果的にお互いのメンタルヘルスをさらに悪化させていたケースもあったと思われる。こうしたコロナ禍の家族関係において親や子どもの過剰適応傾向が関与していたケースも含まれていたと思われ、この辺りを明らかにしていくことが今後の課題の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
高齢の親の介護等による。
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Strategy for Future Research Activity |
承認された1年延長の機会を有効活用し、過剰適応の再定義および新たな自殺予防教育の提案へと繋げていきたい。
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Causes of Carryover |
2023年度までの研究進捗状況が芳しくなかったため。調査研究、英文校正に使用する予定である。
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