2021 Fiscal Year Research-status Report
仲間を攻撃対象に転じさせる表象変化についての認知科学的・神経科学的・発達的研究
Project/Area Number |
21K18552
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (30335062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 宏昭 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (50192620)
米田 英嗣 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (50711595)
嶋田 総太郎 明治大学, 理工学部, 専任教授 (70440138)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 攻撃 / いじめ / 裏切り / プロジェクション |
Outline of Annual Research Achievements |
親しくしていた仲間から攻撃を受けるようになることがある。仲間を攻撃する理由として「非人間化」の関与が考えられる。非人間化とは、特定の他者をより劣った存在であると見なすことで、その対象を残酷に扱ってよいと再定義することである。他者を「攻撃対象」(=非人間)と見なすには、表象の書き換えが必要である。 人間は、あるモノの表象に別の表象を重ね書きすることでまったく異なるモノと認知するが、この表象の書き換えを投射という。仲間が攻撃対象に変化するのも、投射の作用と予測した。本研究では囚人のジレンマゲームを用いて、協力的なパートナーが非協力的になることで、そのパートナーの表象するモノ(名札)までを嫌うようになるかを、行動と生理実験で検討する。R3年度は実験の計画と準備を完了した。感染終了後に実験を実施する。 また研究分担者である米田は、自閉症者(ASD者)の社会的カモフラージュ(目や鼻などを見て無理矢理アイコンタクトの代わりにする、会話にふさわしいトピックを記憶しておくなど)に関するウェブ調査を実施した。18歳以上の大学生及び成人のASD群(n = 48、女性29人、男性19人、平均年齢36歳)と定型発達(TD)群(n = 137、女性90人、男性47人、平均年齢41歳)を対象にした調査の結果、ASD特性(特異的なソーシャルスキル)を持っているほど社会的カモフラージュを行わないことが示された。つまり、ASD者に対してはASD的であるほど(似た者同士であるほど)、社会的カモフラージュを行わないことがわかった。第二に、ASD者は、注意の切り替えが苦手であるほど、TD者に対して、社会的カモフラージュを行うことが明らかになった。第三に、自閉症知識量得点が高いほど社会的カモフラージュは減少したことから、ASDについてよく知ると、カモフラージュをする必要性は減少することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染拡大により、対面での実験実施ができなかったために、予定より遅れている。ただし、対面実験の準備や、ウェブでの調査は実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、R3年度に実施した高校生、成人を対象としたウェブ調査の分析を行う。結果の予測としては、自己主体感(ある行為を自分自身で行っているという感覚)が弱いといじめをしてしまう傾向が強いと考えている。自己主体感が弱いほど、物語に没入しやすいと予測されるので、いじめをすることでいじめをした本人が不利益を被る物語に没入させる(プロジェクションをさせる)ことで、いじめを抑制できるかを予備的に検討する。 また、対面での囚人のジレンマゲーム実験を実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症に伴う影響を受け、予定していた実験の遂行及び人材の雇用が難しくなり、その分支出が少なかった。次年度は、既に研究協力者も決定しており、計画的に執行していく。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Early attention deficit to others predicts impairment of social cognition in adulthood in common marmosets2021
Author(s)
Nakamura, M., Yasue, M., Nakagami, A., Nakagaki, K., Kawai, N., & Ichinohe, N.
Organizer
第44回日本神経科学大会
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